SS.WORST ♯3

□Melty Milky
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※これは「湯煙〜バトン」を答えていたら浮かんだ突発妄想テキストです。
 クソ長いバトン回答からご覧頂ければ幸い。温泉ネタです。



まずはやっぱ風呂だろー、と。
旅館に到着早々、皆でわらわら浴場に足を向けていた。

脱衣所で、各々着ている服を脱ぎにかかる。

「よっ…と。」

ん?

もう一度身を捩ってみる。

……あれ?

シャツが何故か背中に張り付いて、上手く脱げない。
だぁぁぁ!!!脱げろ!!脱げるのだ!!!

しかし。もがもがと長い事、悪戦苦闘しても一向に脱げる気配なし。

「輝〜〜!!」

何か変テコな、ナントカ星人みたいな格好のまま輝を探すべくキョロキョロ。

「はは、出たぞ。光政の困った時の輝頼み。」
「輝、大将がお呼びだぞー!」

そんな、先輩達の協力もあって。聞き慣れた足音が俺に近付いてきた。

「…何をやっている。」

声で分かった。輝、ご到着。

「んあ〜〜脱げねぇんだよぉぉぉ!!!」
「こ、こら!!分かったからジッとしてろ!暴れるな!!」

輝が背中に張り付いているシャツを上にあげてくれた。

「ぷあっ…。あ〜死ぬかと思った…。」
「まったく…まるで子供だな。」

ぴきっ。輝の余計なヒトコトに俺のこめかみに血管が浮き出る。

「悪かったな!!どうせ俺は……!!」

…って。

うわ…。

勢い良く顔を上げると、そこには半裸のままの輝が立っていた。
一瞬、ドキッと心臓が高鳴る。


裸なんて…セックスで見慣れているはずなのに…。
いや。でも、こうやって改めて見るのは初めてかも。
いつも部屋は暗くするし…。
そ…それに、そんな事気にかけてられないくらい、輝は…は、激しいし…。

輝は、結構しっかり筋肉が付いている。
腕なんて血管見えてるし…。むきーってなってるし…。
鎖骨から肩、腕のラインが凄く綺麗だ。



顔もかっこいいし…何だかんだで世話焼いてくれるし…。



ああ〜俺、やっぱ輝のこと好きだ…。



「…?…何だ???」

輝が言葉を投げてきた。

「や…かっこいいなと思ってさ…。」
「なに?」

輝の口調が少し上ずる。その反応でハッと我にかえった。
わわわ!!!お…俺、今凄く恥ずかしい事言ったよな!??

「な…何でもないっ!ほら、風呂とっとと入ろうぜ!な?な?」

俺は高速で服を脱ぎ捨て、訝しげに眉間に皺を寄せる輝を、
大浴場へと、いそいそと促した。


**********************



カラリとサッシを開けると、ムワッと湯気が身体を包んでいく。
うわー。うわー。広いな〜。ん?あの風呂何だろう…真っ白だ…。

俺は何かに取り付かれたようにペタペタと走り寄る。

「光政!あんまり急ぐと転ぶぞ!」
「輝!輝!これ牛乳風呂だって!!」

俺の指先には下手くそな字で『本日の湯 牛乳風呂』と書かれある立て板。

「あぁ、変わり湯か。」
「すげ〜真っ白。気持ちよさそう。これ入ろう!これ!!」

俺は早速、かかり湯をあびてザブンと飛び込んだ。

やっぱ、一番奥だよな〜。
俺は一番奥まで歩いていって、ゆっくり座った。

俺は一番奥まで行ってゆっくり入るのがスキだ。
だって、手前に座ると後から入ってくる人に邪魔されるじゃん?
やっぱ、風呂はゆっくりつかりたいよな〜。


ちゃぽん、と向こうからの波紋が目の前まで緩く押し寄せる。

輝も入ってきた。
ザブザブと水の抵抗を受けながら輝の膝が近づいてくる。


そして、俺の隣に座った。



へへっ…。

俺は頬が緩むのを必死に我慢する。


こんなに広い風呂なのに、わざわざ俺の隣まで来てくれた。嬉しいなぁ…。



二人並んで湯船につかり、天井を仰ぐ。

「気持ちいい〜…。」
「ああ。」

隣で、輝が気持ち良さそうに息を吐いた。
真っ白なお湯が疲れをどんどん取ってくれる。
白いお湯はとても甘い匂いがして。あ〜来て良かったな…。

ちらりと横を見ると輝が目を閉じてお湯を堪能している。
何気なく、ちゃぷん…と顔を両手で洗う姿が何かサマになっていて。


そういや…輝と一緒に風呂入るの初めてだ。

輝ってこんな風に入るんだ…なんて観察してみちゃったり。


あ…。ちょっと…ドキドキしてきたかも…。
ちょっとだけ…甘えても…いいかな。
なんか凄く構って欲しい気分。
お湯は白いから、周りの人からはわからないだろうし。


ちょっとだけ…。ちょっとだけ…。


俺はおそるおそる輝の方に手を伸ばす。
そして、きゅっと輝の手に自分の指を絡ませた。

「光政…!?」

あは。輝の驚く顔が少し可笑しい。
俺は少し悪戯っぽく笑った。

輝は俺の意図を察したのか、何も言わず手を握り返してきた。

輝の手が俺の手を優しく包む。
俺はちょっと嬉しくなって、輝の方ににじり寄った。
肩と肩がひっつく位くっくと、ちゃぷん、とお湯が波を打った。

「…さっきからどうした。」

輝が軽く微笑む。
笑うとまたカッコいいんだ。この小野輝騎ってオトコは。

「ん〜…?」

俺はちょっと恥ずかしくなって、ほっぺまで湯船につかった。
で、そのまま輝を上目遣いで見上げる。
輝は少し困ったような顔をしていたけど。
目は穏やかだし、どけとも言わないからこのままにする。


濁り湯のおかげで周りからは並んで座ってるようにしか見えないだろうし。

これくらい…いいよ、な…。


輝が前に視線を戻して、静かに指を絡めた形で握りなおしてくれた。

それはいわゆる、恋人繋ぎって奴で。



〜〜〜〜〜!!!!


あ、やばい。幸せすぎて死ぬ。


やっぱ好きな人と手を繋ぐっていいなぁ〜。
落着くし、凄く幸せ感じちまう。
繋いだ手から、このお湯に溶けてしまいそうだ。



「…お前は柔らかいんだな。」

突然、輝が口を開く。

な、何だ?柔らかいって。つーか、何かエロくないか?その言い方。

「え…なにが…?」
「もう、ふやけている。」


そう言って、輝の手が俺の手を水面上にちょこっと上げた。
俺の指先は白くなって、皺が何本も刻まれていた。


な…なんだ。そういうことか…。

輝が言ってたのは皮膚の事らしい。
自分の思考についつい苦笑してしまう。


「本当だ。輝の指より皺数多いかも…。」
「ガキ。」
「むか。ガキじゃねぇもん。」
「そういう所がガキだって言ってるんだ。」
「むーー。」


輝を睨んで、ぷくっと頬を膨らませてみる。
でも、輝の目元は優しいままだった。

何だよその顔。…は、恥ずかしくなるじゃねぇかよ。


「何で輝の手はしわしわになんねぇんだよー。」

そうやって互いの掌を二人でしげしげと見ていると、
横の輝が、突然ウッと小さく息を呑んだ。


「輝?どした??」

次の瞬間、絡めていた手をぱしゃりと湯の中に隠してしまった。

「???…輝…?」
「あ…いや。何でもない。」
「え…でも…。」
「何でもない。」


どうしたのか聞いても、輝は「何でもない」の一点張り。


…変な輝。




横の輝で頭がいっぱいだった光政は、
周りの冷やかしや、輝に対する嫉妬の目に気付けなかったのでした。

END
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