連載ブック

□空虚、そして途切れた未来
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そこは、薄暗い、遠い昔に忘れられたような、廃墟だった。


『ここは?』

「蜘蛛のアジト◆」

『蜘蛛?ここにイルミがいるの?』

「うん☆」



そこにいたのは、黒い髪を後ろに流した、とてもとても、黒い瞳をした男。


イルミの瞳とはまた違う、黒。



「待ってたいたぞ。」


「ただいま◇このお嬢さんで間違いないだろ?」


「あぁ。」


一体何の話をしているのか。

果たしてイルミはどこにいるのか。


『イルミは…どこ?』


「イルミ?なんの話だ。」

「あぁ、そうそう◇奇術師はウソつきなんだ★」


ウソ…?
なんのためにそんなことを…。

一体私に何の用があるというの…?


「お前のその体。その中に埋め込まれた宝石。それが欲しい。」


宝石…?そんなもの、あるはずない。


「君の胸にあるのさ◆それを欲しがる人間がうじゃうじゃいるんだ☆」


奇術師はウソつき。


「これはウソじゃないよ◆でなければ君をこんなとこまで連れてきたりしたない◇」


『どうして殺さないの?殺して抜き取ればいいじゃない。』


「お前が死ねば宝石も消える。宝石を取り出すには別の方法がいるのさ。」


(念能力★)


「私は…どうなるの?」


「明日、売り渡す。イルミには悪いがな。」






あぁ、そう。


そうか。


だから私を、


彼は殺さなかったのね?


父も、だから私を捨てなかったのね?








「恐いのか?」


『いいえ。』






この涙の意味を、誰が分かるというのだろうか。



イルミにも。伝わらない。


宝石に支えられた私。なんと滑稽だろう。




イルミ、あなたに会いたい。

だけど、あなたは?




空虚、そして途切れた未来

(その宝石がなければ、彼は私を殺していたの。)







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