連載ブック
□空虚、そして途切れた未来
1ページ/1ページ
そこは、薄暗い、遠い昔に忘れられたような、廃墟だった。
『ここは?』
「蜘蛛のアジト◆」
『蜘蛛?ここにイルミがいるの?』
「うん☆」
そこにいたのは、黒い髪を後ろに流した、とてもとても、黒い瞳をした男。
イルミの瞳とはまた違う、黒。
「待ってたいたぞ。」
「ただいま◇このお嬢さんで間違いないだろ?」
「あぁ。」
一体何の話をしているのか。
果たしてイルミはどこにいるのか。
『イルミは…どこ?』
「イルミ?なんの話だ。」
「あぁ、そうそう◇奇術師はウソつきなんだ★」
ウソ…?
なんのためにそんなことを…。
一体私に何の用があるというの…?
「お前のその体。その中に埋め込まれた宝石。それが欲しい。」
宝石…?そんなもの、あるはずない。
「君の胸にあるのさ◆それを欲しがる人間がうじゃうじゃいるんだ☆」
奇術師はウソつき。
「これはウソじゃないよ◆でなければ君をこんなとこまで連れてきたりしたない◇」
『どうして殺さないの?殺して抜き取ればいいじゃない。』
「お前が死ねば宝石も消える。宝石を取り出すには別の方法がいるのさ。」
(念能力★)
「私は…どうなるの?」
「明日、売り渡す。イルミには悪いがな。」
あぁ、そう。
そうか。
だから私を、
彼は殺さなかったのね?
父も、だから私を捨てなかったのね?
「恐いのか?」
『いいえ。』
この涙の意味を、誰が分かるというのだろうか。
イルミにも。伝わらない。
宝石に支えられた私。なんと滑稽だろう。
イルミ、あなたに会いたい。
だけど、あなたは?
空虚、そして途切れた未来
(その宝石がなければ、彼は私を殺していたの。)