少年陰陽師

□静かな音色を守り抜け
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 鬱蒼とした森の中を並走する1人と1匹。
《失敗は……》
「許されぬのだな。」
《えぇ。》
 言葉少なに話し、聞こえるは彼らが地を蹴る音のみ。
 闇が動き出すーー




 部屋に差し込む朝日により、 目が覚める。
「んぅ……」
 褥の上に座り頭が起きるのを待っていると、馴染み深い神気が降り立った。
《お目覚めでしたか。朝餉の準備が出来てますよ。》
「分かった。ありがとう、太裳。」
 この日の出来事が、物語の始まりとなるーー

 雅楽寮ーー
 刻限は天高く太陽が昇る午の刻。
「兄様、朝餉食べてなかった。」
《体調崩したらしいからな。》
「えっ!?そうなの!?」
 初めて聞く事実であった。
 そういえば、倒れ目覚めてから朝餉まで兄様に会っていない。

「そっか……それじゃ、帰ったらお見舞いしないと。」
《………》
「どうしたの、太裳?黙って……」
《いえ、何でもありません。
 明浩様、そろそろ休憩は終わりのようですよ。》
 “安倍殿!”と自分を探す声が聞こえていた。

 慌てた様子で、呼ばれた方へ走り去る明浩。
 そんな彼を守護する神将2人。
《何れは明浩様もお気付きになるでしょうに……》
《納得してないみたいだな。
 だが、教えないと決めたのは晴明だ。》
《……そうですね。》
 神将にとって、主の命は絶対ーー
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