少年陰陽師
□静かな音色を守り抜け
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太陽が沈み、暗闇が世を支配する時刻ーー
とある貴族が従者を従え、帰宅の途についていた。
「あれは?」
従者の1人が不思議そうに声をあげる。
その声に反応する者は誰もいなかった。皆、急に声を出した彼を不審な目で見つめた。
「どうした?」
「あそこに人が…」
指でその場所を示しながら言う。
しかし、彼以外がそこを見ても、誰も佇んではいない。
《俺が見えているのだな。》
「え?」
最後に彼が見たものは、細かな細工がなされた横笛を吹く謎の男だった。
《それでその男はどうなったんだ?》
安倍晴明の自室ーー
晴明と十二神将である青龍・六合が、昨夜起こった事件について話していた。
「今朝、様子を見て来たんじゃが、魂を抜かれておった。」
その者の妻であろうか、泣き崩れた姿が目に浮かぶ。“助けて下さい”と涙混じりにすがられてーー
何も出来ない自分を嘲笑いたい気分だった。
「分かったことは、見鬼を持つ人間を狙っていることだけじゃ。」
見鬼を持つ人間の魂を狙う男ーー
明浩が狙いだと言った謎の女ーー
「何が起こるのやら…」