少年陰陽師
□静かな音色を守り抜け
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不意に目眩がしその場に立っていられなくなった。
自分の体重を支えることが出来ずその場に蹲る。それと同時に息苦しくもなり、“どうして?”と思いながら俯く。
その時、首に掛けている数珠がひび割れ黒ずんでいるのを見て、この不調の理由を納得する。
護られなければ生きていけない自分、体の弱い自分、全てから目を逸らしたくて瞳を閉じる。
抗いきれない眠気に身を任すと同時に、誰かの腕の中にいるのを感じた。
それを最後に明浩は夢路へと旅立つ。
「明浩っ!!」
苦しそうに呼吸をする明浩を見て、昌浩はただ手を握ることしか出来ない。
なぜなら、明浩の体をうっすらと呪詛が纏っていて、自分にはそれを浄化する力はないから。
昌浩の祖父でさえ霊性の強い数珠で抑え込むのが精一杯だった。
遠い昔、晴明はその呪詛を返そうとした。しかし、呪詛が奥に入り込んでしまってることや体の弱い明浩のことを考えると断念せざるを得なかった。
《落ち着け、昌浩。》
「紅蓮っ、でも…」
苦しそうな明浩を見ると歯痒い想いしか浮かんでこない。それは昌浩だけでなく皆が感じていることで…
どうしようもない想いと苦しそうな明浩の喘鳴がその場を支配していた。