少年陰陽師
□静かな音色を守り抜け
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「明浩、今日出仕するの?」
明浩は雅楽寮に所属で、双子の兄である昌浩は陰陽寮に所属している。
2人とも悲しきや雑用で走り回る日々、つまり直丁である。
「うん。体調も戻ったし仕事も溜まってるだろうから。」
「健気だなぁ明浩は。お前も見習ったらどうよ、晴明の孫。」
白い物の怪、もっくんがしみじみとした様子で昌浩に話しかけた。
「孫言うなっ!物の怪の分際で。」
「物の怪言うなっ!孫の分際で。」
ギャーギャーと騒ぐ一人と一匹を見て、明浩は思った。
“いつも同じこと言い合ってる…飽きないのかな。”
《明浩、そろそろ行かないと遅刻するんじゃないか。》
舌戦に気を取られている明浩に注意を促す勾陳。
「ほんとだっ。兄様そろそろ行かないと……兄様!!」
目の前の光景は変わることはなかった。
《明浩様、お2人は好きでなさってることなのでお止めにならなくて大丈夫ですよ。》
さらっと笑顔でとんでもないことを言う太裳。
「………うん」
「ところで昌浩君や、そろそろ行かないとまずいんじゃないか?」
その言葉で我に帰り、周りを見ると呑気に味噌汁を飲む晴明のみであった。
「ーーーーーーっ!!」