少年陰陽師
□静かな音色を守り抜け
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そこには誰もいなかったーー
大木の根元にある大きな血だまりが、誰かがこの場にいたと告げていた。
「白夜、どうかしら?」
「間違いない。あやつの匂いだ。」
白夜はその優れた嗅覚で、的確に匂いを嗅ぎ分ける。
その答えは、流歌にとって予想出来たこと。
しかしーー
「この出血の量は……これで、まともに動けるはずがないわ。」
血だまりは大木を中心にして、直径1mにわたっていた。
そこを嗅いでいた白夜が、頭を上げ流歌を見つめる。
「だが、この周辺にはいないようだ。」
風に混じるものに、静琵の匂いは含まれていなかった。
「まだ黒蓮は捕まっているのよね?」
白夜は瞳を閉じ、黒蓮と視界を共有させる。白夜と黒蓮の能力である。
「これはっ……、どうやら抜け出したようだ。あと、少年を連れている。」
「少年?」
少年の顔を見るために、白夜は意識を更に集中させた。
見たことのある少年。これはーー
「贄を捕らえるのを、あの時邪魔した少年だ。」
白夜自身、神将と対峙し妖力を根こそぎ消耗したのは記憶に新しい。
「その少年はおそらく贄の血縁者ね。どうして黒蓮と一緒にいるのかしら?
……それよりも、彼をあやつに会わせるわけにはいかないわ。」
碌なことにならないと決まっているーー