少年陰陽師
□静かな音色を守り抜け
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昌浩が目覚めてから2日経過していた。
邸内の暗い雰囲気は少しずつ消えていき、双子の会話をする姿が度々見られるようになる。
もちろん見鬼の才が失われたことは隠し通せるはずもなく……
「兄様、やっぱりまだ?」
「明浩、気にしすぎだよ。まぁ……不便と言えば不便だけど。
それでも、皆分かるように神気は強めてくれるしね。」
そう言われてしまうと、明浩に二の句は告げない。
室内にいる六合に視線を向けると、徒人にも見えるよう確かに神気を強めていた。
肩を落とす明浩に、昌浩は必死の体で言い募る。
「無くなったわけじゃないから。
奪われたんだろうってじい様も言ってたし。」
「奪い返せば良いだけの話だ。そんなに心配するな、明浩や。」
明浩の前に仁王立ちになり、物の怪は言い聞かせるよう話した。
物の怪は慰めのつもりだった。
しかし、彼らは知らない。
昌浩の魂を取り戻す鍵を持つ明浩にとって、それは何の慰めにもならないことを。
その鍵を使うことにより、数多の人の魂が犠牲になることを。
明浩は究極の2択を迫られていた。
兄の見鬼の才か、都の人の魂か。
彼らは何も知らなかったーー