捧げ物・宝物
□素直になれない子供心
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「「うわぁぁぁん…ひっく…」」
泣き止まぬ幼子達を前に鬼はどうすれば良いのか分からなかった。
時は少し遡るーー
季節の変わりめ、急激な温度変化があり体の弱い明浩には辛い季節である。
コンコンと小さな咳が止まらず、明浩の隣で絵を描いていた昌浩が手を止めてしまう程だった。
「明浩、だいじょうぶ?」
「ぅ…ケホッ…」
「少し休むか?」
額に当てた手から伝わる少し高い体温に、鬼は眉を潜めた。
「やぁ…ケホケホッ…」
1人で寝るのは嫌い。目を覚ましたときに誰もいないからーー
「休まないともっと苦しくなるぞ。」
何度言い聞かせても“いゃいゃ”と首を縦に振らない明浩。
今まで幼子の子守などしたことがない鬼に、何が嫌なのか理解する術はなく……
どうしたものかと考えていると、
「いっしょに寝よう?そしたらひとりじゃなぃよ。」
「兄様もいっしょ……ひとりじゃなぃ…………寝んねする。」
数えられない年月の間、他人の気持ちなど汲んだことがなかった。それを幼い昌浩がしているーー
「そうか、1人になるのが嫌なのか…
大丈夫だ。寝ても傍にいてやる。」
精一杯の優しさを込めて鬼、騰蛇は言った。