少年陰陽師

□静かな音色を守り抜け
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《お前の家族の魂を預かっている。》
 心臓を握り潰されたかのような衝撃だった。
「まさか、そんな……」
 否定は出来なかった。伏せているといって、ここ数日姿を見ない兄の昌浩。
 そして、思い浮かぶのは何処か影のある表情をした祖父。

「………」
《交渉成立だな。》
 無言を肯定と受け取ったようだった。それとも、始めから明浩の否定など眼中にないのかもしれない。
「あ………」
 明浩の衣の重ね目に横笛を滑り込ませる。
 それは混乱する明浩でも嫌に重く感じられた。

《忘れるな。家族を殺すか生かすかは、お前次第だ。》
「僕次第……どうすれば……」
 明浩の疑問に答える声は当然あるはずも無く……
《黒蓮!!退くぞ!》
 黒蓮の忠実さを表すように、神将を襲っていた影達が一瞬で掻き消える。

 足止めがなくなったことで、明浩の元までたどり着く神将達。
《明浩様!》
 太裳が腕の中に明浩を抱き込む。
《貴様!!》
 勾陳はいつもより荒い口調で男に切りかかる。

 太裳の心配する声、勾陳と男の斬撃の音。
 明浩にとって、全ての音が遠かった……
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