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□腐った桃太郎
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昔々、ある所におじいさんと、おばあさんが住んでいました。
ある日、おじいさんは山に芝刈り、おばあさんは川に洗濯に出かけました。
おばあさんが川で洗濯物をゴシゴシ擦っていると、川上の方から大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。……ただし、その桃は腐っていました。
ですが年の所為(せい)か、おばあさんの視力は最近低下気味でした。ですからおばあさんは川上から桃が流れてきたのは理解できましたが、その桃が腐っているのは理解出来ませんでした。だからおばあさんは
「大きい桃じゃ、じいさんと一緒に食おう」といってその桃を持って帰りました(落ちている食べ物を拾うのもどうかと思いますが)。
おばあさんが桃を持って帰るとおじいさんはすでに芝刈りから帰ってきて、居間で眠っていました。
「じいさん、起きてください。もうちょっと我慢すりゃあ一生寝てられんだから」
「縁起でもないこというな!!」
おばあさんの(色んな意味で)冗談では済まされない発言でおじいさんは目を覚ましました。
「で、ばあさんや、一体どうしたんじゃ」
「おう、じいさんや。わしが川で洗濯していたら大きな桃を拾ったんじゃ」
「そうか。……ってばあさんや、この桃腐っておるぞ」
「ええっ!? あ、ほんまじゃ。……とりあえずじいさんや、この桃食ってくれ」
「何でじゃ!? ばあさんが拾ってきたんじゃからばあさんが食えや!!」
「そうかい、……じゃあとりあえず桃を切るかい」
「いや、意味分からん!!」
おじいさんの叫びを無視しておばあさんは台所から包丁を持ってきました。
「じゃあ切るぞ〜」
グチョ。
気持ち悪い音とともに桃は切れました。すると中から
「オンギャー、オンギャー」と赤ん坊の声がしました。
「じ、じいさん! 桃の中に赤ん坊がおったぞ!」
「んんんんなもん見れば分かるわい!! どどどどどうするんじゃコレ!?」
おじいさんもおばあさんも慌てまくりです。
「とりあえず保健所に連れてきますかい?」
「んな犬や猫じゃあるまいし……」
「じゃあ、桃に戻してまた川に流すかい?」
「駄目じゃろ! 次拾った人はどうすんじゃ!? つーか普通腐った桃は誰も拾わんぞ!!」
「ええい、面倒じゃ! いっその事殺してしまえ!!」
「わぁぁぁぁ! 待てこのクソババア!!」
「クソジジイには言われたくないわい!!」
などといった口論の末、おじいさんとおばあさんはこの赤ん坊を育てることにしました。
「ばあさん、わしらでこの子を育てようや」
「そうじゃの。……じゃあ名前を決めようかい」
とりあえずおじいさんとおばあさんは赤ん坊に名前を付けることにしました。
「それじゃあ桃から産まれたから」
「ふんふん」
「『born from the peach(桃から産まれた)』、略してボフピーってのはどうじゃ?」
「何で英語!? 普通に日本語でいいじゃろうが!! 」
「じゃあ『桃産(ももさん)』ってのは」
「青森産とか愛媛産とか見たいに言うなよ!!」
「もう面倒くさいから『AAAA』とか『ああああ』でいいわい」
「ゲーセンか!!」
 といった口論の末、結局二人はこの赤ん坊に「桃太郎」と名づけました。
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