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□Groy Story
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―――それは夜、ある家でのお話

……ねえ、お母さん。
「どうしたの? 坊や」
あのね、もう九時になって寝る時間なのに、眠れないの。
「そう、……じゃあお母さんが何かお話してあげるわね」
お話?
「そう、お話よ」
 うん、お話して!
「わかったわ、じゃあお母さんがお話してあげるからとっとと寝ろよクソガキ」
……お母さん、今のお母さんの言葉遣い汚くなったよね?
「気のせい、気のせい。じゃあ『桃太郎』のお話をしてあげるわね」
うん!
「『桃太郎』
昔々、ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日おじいさんは山に芝刈り、おばあさんは川に洗濯に行きました」
うんうん。
「おばあさんが川で洗濯をしていると、川上から大きな桃がドンブラコ、ドンブラコと流れてきました。おばあさんはその桃を拾って家に帰りました。
 その後おばあさんは芝刈りから帰ってきたおじいさんに桃を見せました。おじいさんは
『これは大きな桃じゃ。よし、ばあさん。この大きな桃を二つに割って一緒に食べよう』
と言って、台所から持ってきた包丁で桃を真っ二つに切りました。すると桃の中から大量の血が飛び出してきました」
……え?
「おじいさんとおばあさんが、恐る恐る桃の中を見てみるとなんと中から赤ん坊が出てきました。
……真っ二つに切られた状態で。
体内からは胃や腸といった臓器がもろに出ていました。血に濡れた顔は恐ろしい形相になっており、こちらを睨んでいるかのように」
ちょっとストップストップストップ!!
「あら? どうしたの坊や?」
イヤ、「どうしたの?」じゃないよ! いきなり桃太郎死んでんじゃん!! 速攻で物語終了!?
「あら、このお話にはちゃんと続きがあるのよ」
何コレに続きあるの!?
「そうよ、この後おじいさんとおばあさんは恐ろしくなって桃太郎を山の中に埋めるの。その十年後、桃太郎は恐怖のゾンビ桃太郎になって山から降りてくるのよ。
ゾンビ桃太郎はまず手始めに自分を埋めたおじいさんとおばあさんを殺してゾンビに変身させるの。その後ゾンビ桃太郎は自分の家来になるはずだった犬と猿とキジ、家来と一緒に戦う相手だった鬼までもゾンビに変えてしまうの。そしてゾンビのボスになった桃太郎は世界を征服してめでたしめでたしってお話よ」
イヤ、めでたくねえよ!! 正義のヒーロー桃太郎が恐怖のゾンビ軍団のボスになっちゃだめじゃん!!
「そうね、じゃあ違うお話をしましょうか。かぐや姫でいい?」
うん、して!! 早くして!!
「ウフフ、なんかエロいわね〜」
エロい!? 何が!?
「いえいえ、こっちの話。じゃあ行くわね。
『かぐや姫』
昔々ある所におじいさんとおばあさんが住んでいました。ある日おじいさんが山に竹を切りに行きました。すると竹やぶの中に、金色に光る竹を一本見つけました。不思議に思ったおじいさんがその竹を切ってみると竹の中から大量の血が飛び出してきました」
またこのパターンかよ!!
「おじいさんが恐る恐る竹の中を見てみるとなんと小さな小さな女の子が入っていました。
……しかしその女の子には、首から上がありませんでした。首から流れるのは血、真っ赤な血でした。そしておじいさんがゆっくりと下を見てみると、おじいさんの足元には恐ろしい形相をした女の子の顔が」
ストップストップスト――――ップ!!
「坊や、またお話を止めるの?」
そりゃ止めるよ!! また主人公が速攻で死んでんじゃん!! また開始すぐに物語終了!?
「いいえ、このお話にもちゃんと続きがあるのよ」
コレにも続きがあんの!? まさかまたゾンビになって世界征服じゃないのね!?
「もちろん違うわよ」
そうなの? 良かった〜。
「この後わね、なんと女の子の体の中から体長二・五メートルの巨大なエイリアンが出てくるの。そう、かぐや姫とは世を忍ぶ仮の姿。彼女の正体は地球を侵略しに来たRX‐82星のエイリアンだったのよ」
エイリアン!? 何その無茶苦茶(むちゃくちゃ)すぎる設定!?
「正体を現したエイリアンはおじいさんを頭から生きたままで食べたの。その後エイリアンは仲間を呼んでおばあさんや村の人、仕舞いには天皇や外国の王様なんかも一緒に食べちゃうの。そこに現れたのが宇宙警備隊ボンボコボ」
宇宙警備隊ボンボコボ!? また無茶苦茶な設定が増えたな! ……つーかボンボコボってダサい名前だな!! 他に良い名前無かったのかよ!!
「ボンボコボは地球に巣食う小汚いエイリアン共に最終兵器『ドカーン砲』を発射することを決めたのよ。ところがその『ドカーン砲』はあまりにも威力が強すぎて、地球ごとふっ飛ばしちゃったのよ、そこでお話は終わっているわ」
ドカーン砲!? またダッサい名前だな!! しかも地球滅びちゃったの!? ゾンビ軍団バッドエンドと大して変わんないぢゃん!!
「まだ眠れないみたいね、じゃあ次は金太郎のお話をしてあげるね」
 うん、お願い。
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