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□財布
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 道に財布が落ちていた。それが戦いの始まりだった。
「お、ラッキー、財布が落ちてる」
 そう言って拾ったのは高校生A。どうやら彼は財布を自分の物にしようと思っているようだ。
「あっ、ズル〜い」
 彼の魂胆に気付いて声を上げたのは女子高生B。Aのクラスメイトである。
「アタシも欲し〜い」
 彼女もまた、財布を自分の物にしたいらしい。
「こ、交番にちゃんと届けようよ」
 この言葉の主は、ちょっと気弱な高校生C。彼もまた、A達のクラスメイトなのだが……
「「うるせー、このバカ!!!」」
 AとBに反論されて、黙り込んでしまう。
「つーかさぁ、交番に届けて持ち主が見つかれば、中身の一割が貰えんだからそれでいいじゃん」
 そう提案したのは、このメンバーで最も落ち着いている男、高校生D。
「そうか! よーし、それじゃ中身を見てみようぜ!」
 そう言うとAは財布の中を見てみる。すると……
 財布の中には二百万円入っていた。
「二百万入る財布って、どんな財布だよ!!」とツッコミたいところだが、とりあえず保留しておこう。なぜなら入っている金額が二百万だからである!! ……自分で言っていて意味がわからなくなってしまった。
 話を戻そう。普通に考えれば二百万の一割は二十万、うまい棒が二万本買える計算である。……なんでうまい棒で計算したんだろうか、筆者?
 少々脱線したが、ようは高校生が持つには十分すぎる金額だということだ。だが……
「「二百万もあるぞ!! これだけあれば好きなものが沢山買えるぞー!!!!」」
 このバカ二人はあくまでも落ちている財布を自分の物にしたいらしい。
「ちゃ、ちゃんと交番に届けようよ」
 Cは当然の如く二人に抗議するのだが……
「この財布はオレのだ!!」
「いーえ、アタシのよ!!」
 バカ共は聞く耳持たず。
「この財布はオレが最初に見つけたんだ!! だからこの財布はオレのもんなんだよ!!」
 そう言うとAはポケットからピストルをとり出した。……ってちょっとマテ!! 何故高校生がピストルを持っているんだ!? 明らかに銃刀法違反だろ!!!!
「大丈夫、エアガンだから」
 そーかエアガンなら大丈夫だな、っていやよくねーよ!! エアガンだって当たるとマジ痛いから!!!!
「そんなの屁理屈よ!! この財布に入っているお金は二百万! そしてこの間の私のテストの合計点は二百! だからこの財布はアタシの物よ!!」
 Aの言葉にBは反論し、鞄の中からヌンチャクをとり出した、ってマテやコラ!! 何故女子高生の鞄からヌンチャクが出てくる! アンタちゃんと扱えんの!? つーかお前の言ってることの方がよっぽど屁理屈じゃん!!!!
「だ、だからー、ちゃんと交(以下略)」
 Cは無視されながらもAとBを説得する。
その時だった。
「C、ハイ」
 DがCに竹刀を手渡した。すると……
「テメーら!! 落ちてる財布は交番に届けろって、お母さんに教わらなかったのかー!!!!」
 突如Cは大声を上げ木刀を振り回した。何事かとAとBがCの方を見る。
「な、なんだ!?」
「Cってこんなに気が強かったっけ!?」
 AとBは完全に混乱している。
「Cは竹刀(木刀も含む)を持つと性格が変わる設定なんだよ」
 動揺する二人にDは、ポテチを頬張りながら解説する。見慣れているのか、元々こんな性格だからなのかはしらないが、その表情に大きな変化はなかった。
「なんだよ、その無茶苦茶な設定!?」
「どうせ筆者が話し続かせるために無理矢理作ったんでしょ!?」
「筆者の都合なんてオレが知るか!! とにかく財布は交番に届けろ!!!!」
 筆者に文句を言うAとBに、Cは竹刀を横に振るう。
「うぉ!? 危ねーな!! だからこの財布は一番最初に見つけたオレのもんだっつってんだろ!!!!」
 なんとか竹刀を避けたAは手にしたエアガンを構える。
「いったーい!! 何すんのよ!! もう絶対この財布を手に入れてやる!!!!」
 竹刀が横腹にヒットしてしまったBは怒りながら、ヌンチャクをブ○ース・○ーなみに振り回した。
「だから財布は交番に届けろって言ってんだろ!!!!」
 Cは竹刀を中段に構え、怒鳴る。こうして一つの財布を巡る愚かな戦いが始まったのであった。一方その頃Dは、
「いやー、若いってのはいいですねー」
「本当じゃのうー、…っておぬしもまだ若いではないか」
 さっきそこを通りかかったお婆ちゃんと一緒に道の端の方でお茶を飲んでいた。
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