パラレル

□ROBOT
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tu ru tu ru tu ru ・・・・・・ ru
























天使が歌っているのかと思った。
何処か哀しげな、虚無の広がった美声。
時を忘れて聴き入った。
ふっとこちらを向いた顔に、ますます鼓動が高鳴る。
天使は微笑んだ。

「こんにちは」

恋に落ちた瞬間だった。


































【 TSUNA 】





































世界に ある一人の男がいた

名は『リボーン』

名以外は誰も彼のことを知らない

知っていることはただ一つ

彼が二人といない天才ということだけだった











































男は退屈していた

だから気紛れに俺を造った。

















「おい、駄目ロボット」
「・・・自分で造った癖に駄目とか言うか?普通」
「俺は天才だから普通ってのが理解できねーんだ」
「あーそーでしたね。失敬でした」
呆れながら傍に寄る。
「で、何?」
「呼んだだけだ」
てめえ。。。

制御装置が付いてなければぶん殴ってた。

まあもともと俺は旧式だから簡単にぶっ壊れるくらい脆い装置だけど。
でも代わりに他のROBOTにはない<理性>と<感情>という制御装置がついているから大丈夫。
人間を殴ったりなんてしない。

「そういやお前、片言で喋るけど僕は数字は完璧が売りじゃなかったのか。
何で口調は生意気なぐらい流暢なのにドジを踏むんだ。
お前本当に俺が造った奴か?」

・・・大丈夫。多分。

最近怒りの着火地点が低いから意味があるのかは保証できないけども。

「だからそんなの造った自分が一番よく知ってるだろ!?
っていうか、初号機の俺を今のTSUNA達と比べんな!」
0歳児と成人ぐらい違う。
無理言うなっての。

「比べたのはTSUNAじゃねぇ。
計算ぐらいはそこの電卓でも間違わねぇって言ってるだけだ。
お前が俺の予定を全て管理してるのは知ってるが、まさかまだできてねえ論文の発表を1ヶ月後にしてくれたお前には感謝してるよああそうだとも」
「うっ・・・」
確かに、3ヵ月後(6月)に発表すると伝えておけと言われて、4月に発表できるそうですと言ってしまったのは俺だ。
その通りのことなので何も言えずにいる俺に飽きたのか、男は手をヒラヒラ振って命じた。
「も、いい。
お前が足し算も出来ないのも俺がお前だけ手ぇ抜いて造っちまっただけかもしんねえしな。
お疲れのご主人様にエスプレッソ入れて来い」

雑巾汁入れたろーか。
半ば本気で思いながらも返事を返した。

相手は絶対的な主人とプログラムされている人なのだから。







「ご存知の通り、僕は素晴らしいROBOTです。
望まれた通りに寝ずに働いて、きっと貴方を満足させます」

そんな言葉で売り出されたアンドロイド『TSUNA』。
発売された4年前、世界は改めて奇跡の天才リボーンを称えた。

『TSUNA』 ― 人型お手伝いロボット。

とても機械とは思えないほど滑らかな動き、話し方。
一見どこを見ても人間だった。
但し殆ど無表情という点を除いては。
一体どうやってこんな神がかりなものを開発できたのかと世界中の科学者達が血走った眼で問い詰めた。

「さあ?何となく」

天才と誰もが称すが性格が最悪な男は絞め殺したい一言で終わらせたが。
表情の乏しさについては

「そこまですんのが面倒だった。
も、帰っていーか?」

と答えた。
授賞式の会見のことでだった。






(俺が科学者達なら間違いなく射殺してるなー)
すげーよじいちゃん達。
伊達に年を喰っていないと思う。
今年5歳になる俺とは年季も経験も全然違う。

一人うんうんと頷きカチャカチャと鳴るお茶セットを運ぶ彼もまた、リボーンの開発したROBOTだった。


『TSUNA』初号機・00、通称ツナ。


お手伝いROBOT、『TSUNA』の初号機で、唯一開発者リボーンが傍に置く只一つのROBOTだった。

































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