パラレル

□ROBOT 2
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君の名前はなんておどけて聞く前に、現れたのは黒い塊。
次の瞬間には地に背中を打ちつけていて結構驚いた。

慌てて駆け寄ってくるあの子と、無表情で此方を見下ろす瞳。
その何の感情も無いように見せかけて、実は止め処なく溢れる醜い色に、嬉しくて笑いかけた。



―――ねえ、君は誰に作られたROBOTなの?



それにやっと来た子が慌てて否定して、この子は人間ですと言った。

そうなんだと言いながらもその子供から眼は離れない。
完璧と言っても遜色はない美しい容貌は、精巧に作られたROBOTそのものなのに。

感情だって殆どないみたいだから、ROBOTと同じでいいと思うけどな。






手を貸すその子に礼を言ってからその射るような眼線に気がついて、途端興味を失った。






そういえばその眼と同じ色のドス黒く濁ったものがあるなら、人間なのは当たり前だよね。






























【 訪れ 】































「あ、いたいたコロネロー」
「・・・・・・・・・ッ!」

その軽い口調にコーラを噴出し書類を一枚駄目にした青年コロネロは、次に真っ赤になって振り返った。
「つつつつ、ツナ!?
お前また人工頭脳誑し込みやがったのか!」

此処は主と人工頭脳が許可しなければ誰も入ることは出来ないラボ。
そして主人に絶対を誓う人工頭脳がコロネロの許可なくしてゲートが開かれることはないのに。
「あはは〜、バレちゃった?」
「あははじゃねーぞコラ・・・」
そんな芸当をやってのけるのは、眼の前でニコニコしている少年だけだろう。
まあ今までそんなことをやったことはないし本人もわかってなかったことなので、コロネロも知ったのは最近だが。






ツナは、見た目からは全くわからないが正真正銘のROBOTである。
かの天才リボーンが気紛れに発明したお手伝いアンドロイド『TSUNA』シリーズ初号機No.00。
それを知るものは皆無に近く、知っていても彼があの有名なリボーンのものだと知るものは少ない。
従来のアンドロイド達とは比べ物にならない程その性能は低かったが、ツナにはある特殊なものを持っていた。
それは嘗て何百人もの天才と呼ばれた科学者達が死に物狂いで挑んでも決して生み出せなかったもの。

―感情。

だが現実ではROBOTはそんなものは持てない、持ってはならない禁忌のものだった。
矛盾している世間に知られれば間違いなく危険物として処理されるだろう。
しかしツナはとてもアンドロイドとは思えない程感情豊かで人間らしい容姿だった為、余程の検査をしない限りはROBOTとバレることはまずなかった。
知っているのはツナに好感を持つものだけで密告するような者はいなかったこともある。
作り手とは全く異なる可愛らしい容姿とくるくると変わる表情に無邪気な性格は、そうと知らないものからもとても可愛がられた。
リボーンとツナでは真っ先にROBOTと疑われるのは寧ろリボーンの方だと言われるくらいに。
ドジでおっちょこちょいだが何事にも一生懸命な小さなROBOTはとても愛されていた。
・・・・筈だった。

ツナの正体を知っている数少ない一人であるコロネロは、最近この小柄なアンドロイドに疑問を感じていた。
勿論愛されているということは変わらない。

だた以前は当て嵌まっていた単語が、当てはまらなくなっていたのだ。







未だに慣れない心臓を落ち着けと宥めながら顔に飛び散ったコーラを拭う。
「これで何度目だコラ?」
「だって皆石頭で入れてくれないから」

さらっと質問の答えになってないことを言う相手に、彼の姿が重なる。
非現実的だとわかっていながらも、わかるとしか言いようがないこの感じ。

彼はツナだが綱吉でもある。

だが最近思うのだが。
彼は、綱吉は、こんな性格だっただろうか。






「つーかお前、なんか怒ってねーか。コラ」
いつもは最低限事前に連絡をくれたりしていたのに。
此処まで強行手段をとったのを初めて見たコロネロがちょっと聞きにくそうに言ったことに、ツナはにっこり笑った。


「え、全然?
最近リボーンがちっとも外に出してくれないから黙って出てきただけだし」


(・・・・・・つまりはブチ切れて出てきたってことじゃねーか)
そういえば儚げな見た目と違って、綱吉が結構いい性格をしていたことを唐突に思い出す。






思い出は美化されるものなのかもしれないとふと思い少し哀しくなったコロネロに、ツナはお願いがあるんだけどと口を開いた。



























「ひっさしぶり〜、元気してたー?」

突然の来訪者に、珍しく研究室でカルテを見ていたリボーンは真顔で眼鏡をかけた青年に尋ねた。
「・・・・・正一、お前まだこいつの下についてるとかどうかしてんじゃねーか」
「うわ第一声がそれでしかも気持ちいいくらいシカトとか相変わらずいい性格してるよね君〜」

才能も俺様程じゃないがちゃんとあるのにと言って自分を完璧に無視したリボーンに、白蘭の笑顔が引き攣る。
一方白蘭の後ろに控えていた正一は、リボーンの言葉に嘆息して頷く。

「僕も常々それは思ってるんですが、給料と設備が良いのでついズルズルと」
「って正ちゃんも酷っ、僕を尊敬してるからじゃなかったっけ?」
「本気にしてたんですか白蘭さん、つくづく幸せな頭をしてますね」
「ちょ、マジで泣くからその哀れみの眼とかやめて」
「・・・・・・・で?」




コントのように続くかと思われたやりとりは、リボーンの面倒そうだが鋭い瞳と、





「テメー何しに来やがった」
「あはっ、やっぱりわかっちゃったー?」





泣きそうだった男の顔が喰えない笑顔に豹変したことにより、終わりを告げた。

















Continua a prossima volta...
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