捧げ物

□心を掻き乱す君の存在
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アイツが、ロックオンと一緒に居るのを見た。

1度じゃない。何度も何度も。

いや、何度っていうレベルじゃない。

気がつけば、アイツはロックオンと一緒に居た。


胸の辺りがモヤモヤする。

眉間に、皺が寄った。


何故、アイツはロックオンと居る?


ギリッと唇を噛む。

傷口から血が滲んで、口の中に鉄の味が広がった。


「何なんだ、一体。何故俺はアイツの事を考えている!?

俺は右腕で、横にある壁を殴る。

ガンと大きな音を立てて、壁は微かなへこみを作った。


いつもなら、絶対にしない事。

普段の俺なら、絶対に考えられない。


でも、今はそんなことどうでも良かった。

この胸の変な感触を、どうにかしたかった。


「何やってんだよ、ティエリア。」


陽気な声と供にやってきたのはロックオン。

俺の、この不快さの、原因のひとつ。


「何の用だ。ロックオン・ストラトス。」


俺はヤツの方を向くと、おもいっきり睨んでやった。


「いーや別に?ただ居たから声かけただけ。」


そんな俺に気負いする事もなく、ヤツは言う。


そのあとヤツは、俺の隣を通り抜けようと進みだした。

少しずつ、俺とヤツの距離が縮む。

そしてすれ違いざま、ヤツは言った。


早くしないと、俺がアイツとっちまうぞ?


胸の奥のほうが、ざわりと揺れる。

無意識のうちに、俺はヤツに向かって叫んでいた。


アイツは・・・刹那は、渡さない!!



あぁ、そうか。俺はアイツのことが好きだったのか。

この気持ちは、恋だったのか。

だから、アイツが他のヤツと居るのが気に入らなかったのか。



胸の中のモヤモヤが、すっと、消えていく感覚がする。

俺は、気づかせてくれたロックオンに心の底でほんの少しだけ感謝しつつ、
アイツの居る場所へと足を進めた。



「・・・やっと動いたか。ホント世話が焼けるなー。・・・2人とも。」

後ろでロックオンがそう呟いたのを、俺は知らない。







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