兎虎小説

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「―――虎徹さん」
「うん?どうした?」
「…あなたの、その細い腰に抱きついてもいいですか?」
「……うん?」

なんだろう。バニーちゃんは今なんと言ったのだろう。
俺の、腰に、抱きつきたい?
いやいや、幻聴だろ。だって今トレーニングしてるし(バニーちゃんだけだけど)、バニーちゃん俺の目を見てないし(ランニングマシン使ってるから)、何より、…こ、恋人同士じゃないし?だから、これは絶対に幻聴であって。

「ごめんバニーちゃん。今の聞き取れなかった」
「耳まで遠くなりましたか?おじさんの腰に抱きつきたいと言ったんです」
「幻聴じゃなかった…」
「僕の願いを聞いてはくれないんですか?…せっかく、あなたを信じてみようと思ったのに!」
「そのセリフどっかで聞いたな!」

ダメだ。バニーちゃんと話しても埒があかない。これは無視するに限る。
そう思った俺は、バニーちゃんの横に備え付けられていたベンチから立ち上がり、更衣室へ向かう。

「…」
「…」
「…バニーちゃん」
「なんですか?」
「どうして着いてくる訳?」
「僕も用がありまして」
「じゃあ時間ずらして」
「は?この僕が?時間を?」
「…もういいです…」

逃げたいのに逃げられない。これどんな状況?これも無視してやる、そう意気込んで更衣室のドアを開ける。今日はトレーニングしてないのに疲れた。さっさとシャワー浴びてしたくもないデスクワークして、帰ろう。
ガチャンとロッカーを開け、楓からもらったタオルをひっつかむ。滅多に会えない愛娘が買ってくれたタオル。モスグリーンでやわっこくて使い心地のいいタオルだ。何度見ても嬉しくて、にやけてしまう。
バニーちゃんか事なんか忘れて、俺は上機嫌でロッカーを閉める。

「じゃあな」
「――待ってください」
「あん?」

がしっと不意に掴まれた手首に、びっくりした俺。バニーちゃん、もしかしてあしらった事怒ってる?――冗談まじりで聞いたら、バニーちゃんはかっと顔を赤く染めた。
え?なんで?

「…おじさん」
「な、何?」
「もう…ダメです」
「え…んっ!?」

つかんでいた手首を、バニーちゃんは引っ張り、いきなり俺にキスをかましてきた。急な事だったから口を閉じれなくて、それを知ったバニーちゃんが舌を突っ込んでくる。
くちゅくちゅと荒れた息づかい。こんなおじさんとキスをして何が楽しいのか知らないが、ここは更衣室。いつ誰かが来てもおかしくない。緊張して恐ろしかったけど、巧みに動くバニーちゃんのざらついた舌に思考が追い付かなくなっていた。

「ふ、…んんっ、バニー…やめろって…」
「はぁ…おじさん…っ」
「ひっ」
「腰…はあああ」
「く、くすぐった…あははっ!!やめろ!」

腰のラインをなぞるかのようにバニーちゃんの両手がわさわさと上下に忙しなく動く。それが妙にくすぐったく感じて、思わず笑いが出てしまった。
ムードも欠片もない雰囲気。早くシャワーに行きたい。でもバニーちゃんが知らないうちに興奮し始めている事に、目を背けたくなった。

「はあはあ、おじさん、僕、我慢出来ない」
「ちょ、…ぎゃあっ!」

ばばっとバニーちゃんの手が俺のトレーニングシャツをめくる。変な声が出てしまい、一人で赤くなる。
バニーちゃんは俺の上半身をまじまじと見たあと、俺の乳首にかじりついた!
ちょおおおお!!バニーちゃんなにしてんの!

「やめろなにしてんの!?」
「ちゅ…」
「やめ、…んっ…」

勃ってもいない乳首を入念に舐めるバニーちゃんの舌。吸ったりかじったりと赤ん坊がする行為を今こいつはしている。
やめてくれ、そう懇願してもバニーちゃんはやめてくれない。そして、いつの間にか両乳首を弄られていた。

「やだ…っ、それ、嫌だっ…てーの…!」
「もう乳首勃ってますよ…はあ、おじさん…虎徹さん…感じてますか?」

くにくにと俺の乳首をひたすら触り続けるバニーちゃんに、直視出来ない。…いや、理由はそれだけじゃないけど。こいつ、何か知らないけど興奮してる。息が無駄に荒い。どうしよう、なんでこんなくたびれたおじさんに興奮するのかわからなかった。
そして、なんでくたびれた俺が下半身を勃たせているのかも。
バニーちゃんが上ばかりいじるのももどかしくて、俺は無意識に膝同士を擦り合わせていた。バニーちゃんが気づかない訳がなく、バチりと瞳が合うと微笑まれた。

「どうしたんですか?膝なんか合わせて…」
「な、んでもない」
「嘘つき」
「うひゃあっ」

こいつっ…!!知っててわざとズボンおろしやがった!完全に勃起してる自分のモノに、羞恥心がわく。そして、馬鹿だと言ってやりたい。
うっとりしていたバニーちゃんは、おもむろに俺自身を触ろうと手を伸ばす。俺はその手を思いきり掴み、遮った。

「、バニー!それはシャレにならねえ!!」
「バニーじゃありません、バーナビーです」
「そのセリフはいいっつーの!…まさかバニー、俺とセフレになろって魂胆か?」
「何を仰ってるのかわかりませんね。僕はあなたが好きだからこうしているんです。セフレだなんて、不潔以外の何物でもない」
「、へ…?」

好き?すき?スキって、どういう事だ?
…というか、順序を間違えているのは気のせいだろうか。普通は、気持ちを伝えてからだろ!?
バニーちゃんに思いきりそう言いたかった。けど、また口を塞がれて言えなかった。

「んっ…ふぅ……あ、」
「、は…虎徹さん…」
「あ、…あぁ…っばにぃっ…」

普段は排泄にしか使わない後孔に指が這う。ぐにぐにと浅い出し入れに酷くもどかしい。早くしろ、やるならとっととやってしまえ。俺だってもう限界なんだ。
自身から先走りがトロトロと流れる。さっきバニーちゃんが触ろうとしたのを俺が遮って触らせなかったから、バニーちゃんはそれを真に受けて触ろうとしない。それなら萎えてしまえと悲願したのに、俺自身は堅く、更にそそり勃っていく。…これじゃあ、俺も変態じゃねえか…っ!

「後ろ、初めてですいませんが、僕、後ろだけでイクあなたの乱れた姿が見たい…」
「…っ、けっこう、マニアックな趣味を持ってんな」
「あなたにだけです、乱れた姿…想像するだけでぞくぞくします」
「んあっ…!!」

冷たいローションをとろりと俺の腹に垂らすバニーちゃん。その冷たさに自身がふるりとまた震える。本気で触らないでやろうとするバニーちゃんに、なにも出来ない俺。
ねちっこいのは正直いじらしくて好きではないが、バニーちゃんにならイケる気がした。
―――にゅぐ、バニーちゃんの関節が後孔にのみ込まれていく。ちゅぷちゅぷと水音とそれ以外の音が混じりあって恥ずかしい。曲げられた脚を更に開かれ、もう俺、男なのになんてはしたない、楓に見せられないと悲しくなって泣けてくる。涙は快感の渦に巻き込まれて出てるけど。
あられもない、酷い喘ぎを漏らしていたら、バニーちゃんの指が一本、また一本と増えていくのに気づいた。

「バニーちゃ、ゆび、ゆびふえて…っ」
「一本じゃ物足りないでしょう?おじさんのくせに紅く色づいているココ…僕の指をはなさないですよ?いやらしいココは…たっぷり愛でて差し上げます」
「ひっ、あ、あぁっあ、ああんっ!!」

どこぞのエロ漫画のセリフをはいてんだ、とつっこみたくなった。でもそれが出来なかったのはバニーちゃんがぐちゃぐちゃと三本の指をスピーディーに抜き差ししたからだ。前立腺を抉り、ほかのイイ所をしきりに擦るバニーちゃんはいつになくドSの顔をしている。鼻血を拭けばかっこよかったのに…その残念な顔を見ながら、俺は自身から精を吐き出した。

「あ、っ…あぁ…」
「いっぱい出しましたね。ああ、顔にも飛んでる…本当に後ろだけでイキましたね?」
「い、うな…」
「虎徹さん、今日はこのくらいにしましょう。あなた、疲れたでしょう?僕はまだいけますが、むしろまだ突っ込んでいませんがね!」
「…もう嫌だ…」
「ダメですよ。僕はあなたが好きなんですから…」

僕好みに仕立てて差し上げます。
しきりに眼鏡を押し上げ、俺が出した精液をべろりと舐めるバニーちゃんが恐ろしく見えた。




―――…俺、バニーちゃんとコンビ、やっていける気がしない。


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