兎虎小説2

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「虎徹さん。今の時期、ひまわり畑がすごく綺麗なんだそうです。一緒に、見に行きませんか?」
「……マジか、行きたい!」





あれから四ヶ月。
なんやかんやとバニーちゃんともめたあの日から、四ヶ月が経っていた。
泣いて泣いてからした、あの桜が綺麗な季節から。



今はバニーちゃんと仲良くなって、ずっとずっと希(こいねが)ってた恋人という立場にいる俺は、なんて浅ましくて幸せなやつなんだろうか。ニアはそんな俺を好きでいてくれた。愛していてくれた。
それを俺は、ずっとずっと与えられてどろりと渦巻く中にいてニアに分け与えることなく、過ごしていたんだ。
馬鹿だったよ、あの時の俺は。ニアは見た目だけじゃなくて中身もそれに値した……、いや、もっとすごくて、ぴかぴかの人生を送ってたニアに俺が舞い込んでぐちゃぐちゃにおかしたんだ。でも、あいつはそれを簡単に受け止めてくれた。俺にも自信をたくさん持たせてくれた。

それはとても大人で、かっこいいニアの素だったんだ。


「ひまわりって、素朴ながらも綺麗ですね。雑誌ですけど、僕初めて見ますよ」
「マジかよ。ひまわりなんて俺んちの周りにたくさん生えてたぜ?」
「生えてるってあなた…。てか、虎徹さんのうちって、ご実家ですか?」
「うん。楓と一回だけ、見に行ったけど他所のうちだったから遠巻きでな。でも遠くから見ても楓より大きかったなあ」

バニーちゃんが持ってきてくれた、コーヒーの紙のふちをなぞる。
友恵ちゃんが置いていった、唯一の俺の宝物…。愛しい娘。めったに会えないけど、俺はいつまでも楓との思い出を霞めさせたくないし忘れたくもない。最近はちょっとませてきたというか、…冷たいんだけどなっ!
―――それでも楓とは、うまくやっていきたい。

「娘さんが、いたんですね。…僕はやはり、あなたの事をなにも知らない。ずっと上辺だけのあなたを見ていたに過ぎない。僕は、バディとして失格だ」
「…だったら、バニーちゃんはこれから俺の事知っていけよ。俺は、お前と離れたくないよ…」
「虎徹さん…嬉しいです」

きらりと光る緑の瞳。
ああ俺は、やっぱりバニーちゃんが大好きで、離したくないって思っちゃうんだ。ニアとはまた違った、澄んだその瞳に射抜かれて、骨抜きにされちゃって、そして。俺の心はバニーちゃんでたっぷりと満たされて、ぽっかりと空いていたところを簡単に埋め尽くしてくれる。
ふわふわの金糸が俺の鼻をくすぐった。
その髪は、ニアと同じ色。
―――そして、夏に咲き誇るひまわりと同じ色なんだ。






***






「、は…こてつ、さん」
「やだ、やだよぅ、そんなに…広げな、ぁ…っ」

ぐい、とバニーちゃんの親指が俺の穴を広げる。そこにはすでに解されてどろどろのぐちゃぐちゃになって、バニーちゃんの雄が入ってる。感覚的にはイイトコロに当たってて、今にもイっちまいそうなほど気持ちが高ぶってる。
それにも関わらず、バニーちゃんは入れたままなんにもしないでさらに指の一番太くて角張ってる部分を入れようとしてくる。いりぐちがジンジンして、膝が笑ってきた。

「興奮、してます?ここが会社の、休憩室だからかな?」
「やらぁ…っ!おと、音だけはたてないで…っ、ひ、あぅぅ」
「大丈夫、もう、誰もいませんよ」

じゅぶ、じゅぶ。バニーちゃんのモノじゃない指だけの音が静かな部屋に響く。それが俺のうしろから、しかもバニーちゃんの視界に入ってると思うと触ってもない、晒された俺のモノもふるりと震え、はちきれんばかりに透明な液を出していた。
みっともなくて情けない。だけどなにかがせり上がってくる感覚にむしろ高揚感…的な感じが俺を襲う。
あれか、俺は、バニーちゃん用のマゾっ気があるというのか?お尻を叩かれて「きゃうっ!!」って叫ぶ、アレ的な……。
考えて、それはないと思う。ああ、少し萎えてしまった。

「ちょっと、なに考えてたんですか。萎えてますよ?それとも痛かったですか?」
「いや…、ちょっと、背徳感が…」
「ひどいな…せっかく楽しんでいたのに。じゃあもっと、痛くした方がよかったですかね、?」

バニーの機嫌が少し悪くなる。
俺は身の危険を感じて入ったままの半身をよじる。だけどそれを、バニーは遮ってより深く、より強くピストンが繰り返された。
チカチカと弾けていく視界がうっとおしい。けれどそれは俺の前立腺ってやつから出てるし、それを出してんのはバニーなんだ。溢れる唾液が、止まらない、やばい、やばい。
きもちがいい。

「すげ、気持ちいいっ…もっと、もっと、、ぁっ…ぁぁあぅ!」
「虎徹さん、こてつ、さ、っ」
「ばにぃっ…す、すきっ―――だいすき、」

「…っ、僕もです!もう離したくない!!」

最奥を突かれて、真っ白な世界に変わる。甲高い俺の声はバニーちゃんの口の中に入って、いつもより興奮したペニスはどろりとした粘膜をかぶせて腹に落ちた。ナマでヤったから、バニーの生きてた遺伝子は俺の中で死亡。
あは…、笑えないけど、実際そうなんだから仕方がない。しかもまだ出てる。
それを考えてる暇なんてなかった。
丁寧に、自身の舌をうまく使って口の中を駆け回るバニーちゃんの舌。擦られるだけで、俺はとろんとろんのぐちゃぐちゃに心酔しちまって、それでもなるべく答えられるようにバニーちゃんの舌に答える。

ぶるぶると、全身が震えた。

「んぅ…、ん、ん…っ」
「すごいです…、まだ、どきどきしてる」
「バニー…」
「…、虎徹さん、ごめんなさい」
「ん?」
「もう一回だけ…」
「うん、…いいよ言わなくても。わかってた」

律儀でしっかりもののバニーちゃん。お前はいつもなにかと言葉で言っていたんだ。だから、もうわかってる。俺はバニーの感情でさえも気づいてみせるさ。
だからバニーもわかってくれ。俺がたくさんしたいこと、見て欲しいとこ、全部。
そうしたら、俺とお前は一心同体。
なんにも言わなくてもわかるようになるから。
そうして俺は、「バニーちゃんが満足するまでヤっていい」って言うんだ。





***





きらきらのぴかぴかに光る、まるで宝石のような、一面のひまわり畑。背丈は俺たちと同じくらいにまで育って大きい。開ききったその綺麗な花は、バニーちゃんの色。
隠れられると、案外見つかりにくいんだ。

「おおーい、バニーどこだぁ?」

はしゃぎまくったバニーがいなくなって数分。俺はとうとうひまわり畑の中で地べたに座り込んだ。

――――あのあと、約束通りバニーとひまわり畑に来ることに成功した。ロイズさんからは「休まないで欲しいんだけど」って冷ややかな目で見られた。けれど有給を消化しないで休みなしで働いたバニーと、最近の俺の頑張りようを知っていたロイズさんは、ため息をつきながら一日だけ俺たち二人のまとめてお休みを許可してくれたんだ!
オリエンタルタウンののどかな街並みと空気をバニーのも体験して欲しくて、俺の車で田舎に帰ってきたんだけど…会いたかった楓は友達のうち。兄貴は店のきりもり、頼みの綱だったかあちゃんもなんかの集まりとかでうちにいなかった。
仕方ないから、一日だし日帰りしましょう?と言ったバニーちゃんの後ろに光が見えたけどそれは言わなくてもいいや。そんで、とりあえず友恵の墓に寄って綺麗に磨き、手を合わせ話をしてからひまわり畑に来んだけ、ど…。
やっぱりというべきか、バニーちゃんの姿を失った。
感動してくれたのは嬉しいけど、おじさん一人おいてかないでくれよな!

「虎徹さん!」

一人ぶすくれてると、バニーがかきわけて俺を見つける。どこに座ってるんですかって…お前がいなくなったからここで待ってたの!!

「まったく…いなくなるなよ…」
「ごめんなさい。あ、さっきひまわり畑にでたんです。そしたらちょうどいた地元の人にこの花言葉を教えてもらってて」
「花言葉?」
「ええ」

バニーは多分…もらったと思われるひまわりの花一つを俺の胸に寄せ、そのまま抱きしめる。ふわりと香るひまわりは近くで見ても大きくてすごい。
布越しに伝わるバニーのにおいと、心臓の音。それはとても心地いくて――。

「僕と結婚してください」
「―――え?」

けっこん…ケッコン、……結婚!?

「もう、虎徹さんと恋人という言葉でいたくないんです。ひまわりの花言葉は愛慕・敬慕・熱愛、憧れ…そして、あなたを見つめるなんです。シタゴコロ、と書く恋ではなく、マゴコロの愛としてあなたと一生を添い遂げたい」
「…いつ覚えたの?ばにー」
「結婚はずっと、シタゴコロとかはさっきですね。これで確信しました。ひまわり畑に誘ったのは偶然ですが、やはりどこかでつながっていた。僕は、虎徹さんとずっといられるんだなって!」

嬉しそうにその緑の瞳を輝かせ、俺を見るバニーはなにをしてもかっこいい。整った口からは俺を喜ばせるものばかり。いっぱいもらって返さないのは、俺のポリシーに反してしまう。
こんな展開まで望んじゃいなかった。ただバニーと一緒に過ごせたらなっていう小さな小さな願い。
それがでっかくなって抱えきれなくなって、もらってばかりの俺はそれを返す番なんだ。

ああ、なんてこった!!バニーが揺らいで見えないなんて!

「俺を、しあわせに、してください。俺もバニーを幸せにするか、ら」
「ええ、…ええ。必ず、あなたがいつまでも幸せに生きられるように頑張ります。愛してます、虎徹さん」



ニアのために頑張って、それを彼は拒まず、綺麗に受け取った。
だけどそれは俺の妄想。
ほんとはニアが、俺に全てを与え、知っていたバニーへバトンを渡せるために希望を与えていたんだ。それが間違いを犯すことなくこのハッピーエンドって形のものにしてくれた。

ありがとうニア。知っていて拒否しなかったなんて、俺には出来ない。きっとバニーに似てるからできたのかもしれない。そっくりだったからこそ、なんらかのシンクロみたいなことが起きたのかも。


俺は携帯を開いて、メール画面を起こす。
宛先はニア。
軽くタップして、先に行ったバニーを追いかけた。





「―――まったく、あの二人ほんっとお似合いだよ。バディって言葉が」


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