幻想怪奇小説『令嬢の家』

□第三回 甘い記憶
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人懐こくじゃれてくる子猫。
肌を通して感じる軟らかな温もり。

「お前、どこから来たの?」

その声に応えるように子猫が彼女を見つめた。
その瞳はどこまでも深い漆黒の闇。
吸い込まれてしまいそうな不思議な光りを放っている。

私…知っている…この感じ…

体が溶けてしまいそうな甘い目眩に襲われて、微睡みに落ちかけたその時だった。
子猫はするりと腕を摺り抜け、本棚の方へ…そして、じっと何かを見つめている。

「そこに何があるの…?」

好奇心に駆り立てられ、近づこうとした彼女の目の前で、猫は空気に溶けるように姿を消した。
急いで駆け寄ると、本棚の裏側に、猫の子が一匹通れるほどの、細い隙間があった…                     
                              《続》















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