幻想怪奇小説『令嬢の家』

□第一回 前奏曲
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そこは、外観だけでもうっとりしてしまう豪華な屋敷。何不自由なく育った一人娘のよしこは退屈そうにベッドに転がっていた。

「つまらない」
と小さくつぶやき目を閉じるよしこ。昼寝をしようと決めたらしい彼女は、猫のように体を丸め規則的に呼吸した。

あと数秒もすれば夢の中、というくらい意識が薄れたその時だった。
「チリン」
とかすかな鈴の音が聞こえた気がして、よしこの意識は現実に引き戻された。幻聴なのだろうか、彼女は体を起こし耳をすます。
「チリン」
やはり、聞こえる。

どうやら別室から聞こえるらしい。好奇心を持ったよしこは、裸足のまま自室を後にした。
耳の奥の方を刺激するような、その音に誘われるがままに…。
                              《続》















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