幻想怪奇小説『令嬢の家』

□第四回 予感
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あの子猫は、この隙間にかくれたのだろうか…?
よしこは壁に身を寄せて、本棚と壁との隙間を凝視した。

「ねぇ、そこにいるの?」

大きい本棚が連なって作る影は深く、奥のほうまで見てとれない。
子猫にからかわれているのかしら?
そう思って壁から離れ、本棚の前へ移動する。
部屋を見回すが、やはり子猫の姿はどこにもない。
あれは夢だったの? …この手に感じたぬくもりも夢…?

「チリン」

夢ではない。また聞こえた。振り向こうとするその背中に、やわらかな風がふきつける。
その方向に窓はなく、本棚の上の段から1冊の本がふわりと降りてくる。
見た目と裏腹な軽さで、風船のようにふわふわと落下したその本は、さらさらと頁を開いて床に落ちついた。
何かの予感とともに、よしこはその本を覗き込んだ…

《続》















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