短編
□夢食い
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『……く、隼人君!』
気付くと其処には骸が居て、俺は少しばかり開いた重たい瞼をゆっくりと開けた。
『む…骸…?』
シーツを掴む手は汗ばんでいて、骸がその手をそっと握り締めていた。
『大丈夫ですか?
随分唸されていた様ですが…』
『あ…ッ』
夢の記憶が一気に頭の中にフラッシュバックしてきた。
水の音…コンクリートの臭い…冷えた足先…
そうか、あれは全て“夢”だったのか―…
『どうかなさいましたか?』
『………否』
…夢が怖かった、なんて口に出せるかよ。
少なくとも俺のプライドに傷が付くから、手短に答えると後は黙っていた。
そんな俺を見据えたのか、骸も黙って俺を見つめていた。
『隼人君…でもこれだけは答えて下さい。』
『何だよ?』
『僕には嘘を付かないで下さい…。
正直に言ってしまえば楽ですし、何より隼人君の悩みは僕の悩みでも在るんですからね…?』
真直ぐ俺を見る骸の瞳には嘘がまるで無かった。
…この時俺は、コイツになら話ても良いんじゃないかと思い口を開いた…。
*NEXT後書き