短編

□※タイトル・無
1ページ/2ページ






木々が茂る、緑が舞った。
ふわりと葉が落ちて獄寺の頭にふさりとのっかる。


「んー…もう少しで夏かぁ…」


なんて少し感慨深くなりながらも、裏庭から応接室へと足を向けた。
そよそよと気持ちいいくらいに風が吹いている。
あの男はこんな気持ちいい風をあそこで受けているだろうと頭を働かせたのだ。


「くっそー、ずりぃよなー…」


少し機嫌が悪くなった頃に煙草を取り出し、火をつける。
すぅっと息を吸って、はぁと吐き出した瞬間に煙草も口の中から無くなった。


「は?」

「こんなものを吸っていると、身体に悪いですよ?隼人君」


にっこーーーと無駄なまでに笑顔を撒き散らすのは、
オッドアイの目立ったぱいなぽ……六道骸だ。


「くっふふ、こんな所で何をされているのですか?」

「……森林浴…?」


あながち嘘でもないよな、と誰に言い訳するでもなく心の中で呟いた獄寺は、一人でうんうんと頷く。
その様子に骸は「可愛いなぁ」と思いつつ、そっと獄寺の肩に手を置いた。


「くふ、さぁ隼人君いざb「隼人に近寄らないで下さい骸様」


そんな骸の言葉に被せるようにして現れたのは、
オッドアイではなく眼帯が目立つ少女クローム・髑髏だった。


「く、クローム…?」


まさか骸が現われていてクロームまでと思っていなかった獄寺は少々驚く。
しかし骸はクロームの出現に怒るどころか、怒りを露にしていた。
いつもは崩れる事のないその笑顔が、今は引きつっている。


「クフフ、お前と言う子はまた僕の邪魔しに来たのですか」

「残念なのは骸様です。隼人に触れないで残念なのがうつります」

「ざ、残念?!僕のどこが残念だと言うのですかこの僕の何処が!!」

「この僕の、とか言ってる 時点で存在が残念ですよ骸様」


獄寺を総無視(しかし腕は引っ張り合いながら)の言い合いは、どうやら精神面でクロームが勝ったようだ。
骸はそこら辺の木にもたれかかっておーいおい泣いている。


「さ、行こう隼人……」

「え、」


泣いている骸をクロームは放っておき、獄寺の腕を引っ張った。
されるがままに歩く獄寺は、ちらちらと骸の方に視線を送る。
しかしクロームの足が止まらないので、獄寺は早々に開き直った。


裏庭から校内へ入り、靴を替える。
クロームの上履きは当然無いのでどうしようか、と言ったところに今度は綱吉が登場した。


「あれ、獄寺君!!と、クローム」

「十代目!!どうかされたんすか?」

「……ボス…」


すのこに立ったままの獄寺の腕をクロームが引っ張り、クロームと綱吉はにらみ合った。
にらみ合ったといっても綱吉は始終笑顔(オーラは黒)でクロームはしかめっつらをしている程度だが。


「じゅ、十代目、クローム……?」

「あ、ごめんごめん何でもないよー」

「ごめんね隼人、負けちゃった……」

「は?」


負けちゃった、そう言うとクロームは玄関から去っていく。
その背中は小さく見えて、ひきとめようとした腕を伸ばした瞬間 その腕は綱吉によって止められた。


「え、」

「ふふっ、クロームよりも俺を気にして欲しいなぁ」


笑顔で言う綱吉に、獄寺はどこか震えを覚えた。
笑っているのになにかが怖い。
否な汗が額を伝って、頬を滑る。
その汗を見た綱吉は笑って、「汗かいてるよ?」と面白そうに言った。


「くすくす、どうしたの?獄寺君」

「え、っと……いえ、何でもないんです、けど…」


その後の言葉に詰まる獄寺は、こくんっと喉を鳴らした。
綱吉は未だ笑っている。


(こ、わい……っ、)

「獄寺君?」

「ひ、ひば…っ!!」


小さくその名を呼ぶと、獄寺はすのこに座り込んでしまった。
綱吉はあーあと残念がるような声を出して、
もうですかと靴箱の向こうの人物に話しかけた。


「来るの早いですねー、雲雀さん」

「煩い、隼人に触るなゲテモノ」

「ははっ、酷いなぁ…」


まぁ、今日の所はここまででいいやと言って綱吉は獄寺の腕を離した。
雲雀とのすれ違い様に綱吉が発した言葉は獄寺には届かなかったが、
雲雀は眉間にしわを寄せる。


「……だからアイツには近寄るなって言ったじゃないか」

「…でも、十代目だ…」

「馬鹿な子」


そう言うと雲雀は、獄寺の腕をとって立ち上がらせた。
その軽さに思わず雲雀は「かるっ」と呟いてしまった。
ゆっくりと獄寺の顔を見ると、案の定ムッとした顔でいる。


「隼人、もっと食べて」

「…やだ…」

「隼人」

「っ、…雲雀が!!雲雀が作ってくれんなら…食べる…」


その照れた顔に、雲雀は思わずくっと笑みをこぼした。


今日の夕飯当番は、雲雀恭弥で決定だ。



end
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ