★頂き物SS★

□[Birthday]
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「今日は命日でね」

「え?」

「名をハマト・ヨシと言った」

「あっ」

レオナルドはようやく合点がいった。
言葉の意味が、スプリンターからにじみ出る不穏な雰囲気の正体に繋がった。

「師匠の、師匠?」

「そうなるな。今、彼との生活を懐かしんでいたよ」

「…にしては、ピリピリしていましたけども」

「後悔、かもしれんな」

朝から、下水道のタートルズの家は重たい空気に満ちていた。それにより、いつもの騒がしい1日が皆、口をつむり、妙な緊張に部屋の行き来すら忍び足になっていた。
言葉にせずとも亀たち全員に影響力を与えるのはさすが父代わりであり、その父の心にある師の姿があまりにも大きいためであろう。

「――師匠。あの人の誕生日は覚えていますか?」

「誕生日?」

「今度、俺たちで祝いましょうよ。彼のおかげで師匠がいて、今の俺たちがいるんです」

「…」

「だから生まれてきてくれたその日に、よろこびと感謝を」

スプリンターはレオナルドを凝視した。茶色の鼠毛から見えるスプリンターの瞳が、感心に見開かれているのがわかる。
レオナルドの言葉に、スプリンターは悔恨の念を解いた。

「そうだな。誰かを恨んだり憎むなど、…あの人も望んではおらぬだろう」

自分たちの目的は平和を守ることであり、復讐などは二の次。否、新たな火種を呼び起こすことなど望んではいけない。
スプリンターは何年も前に誓った決意を改めて、自分の弟子によって思い出されたのだ。

「大切なことをすっかり忘れていたよ。ありがとう、レオナルド」

「俺は師匠の教えを忘れなかっただけです」

「レオナルド…」

「ありがとうございます、師匠」

決意の元にまた進み、過去を振り返る時はよろこびと感謝を送る。
そのたびに成長する息子たちの背中を、スプリンターは笑顔で見つめるのだった。

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