★頂き物SS★
□[理性と本能]
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「好きだろ、こういうの?」
ワザと吐息がかかるように囁いた甘い声に、背中がぞくぞくと波打つ。
その隙に、私の足を撫でていた指が窪へと差し入れられた。
ほんの一瞬のことだった。
「…、っ!!ん、や…ぁっ」
彼の腕がタオルの下で何かを探るように動き回る。
忙しく、時にはじっくりと、口付けをしながらもその手が休むことはない。
私の反応を楽しみながら、少しずつ確信へと近付けていく。
何度も敏感な部分に触れられ、溶けてしまいそうなその感覚に、私は小さく身震いをした。
「もう、我慢できねえか?」
口付けの合間のその問いに、私は恥ずかしながら小さく頷く。
ラファエロは待ってましたとばかりに口元を歪ませると、指を引き抜き私の身体を支えてソファへと仰向けに押し倒した。
身につけているタオルを外すことなく腰までたくし上げると、彼が膨張して張りつめている自身を、焦るように一気に差し入れる。
「っ、…手加減出来そうにねえな」
私が一瞬の痛みに小さな悲鳴を上げてすぐ、ラファエロが辛そうな表情でそう告げて腰を大きく引いた。
戸惑う間もなく、彼は私を捕らえて動き始める。
ただそれだけを求める本能に従うように、強く速く、緩急などつけることなく一気に互いを追い詰めていく。
「っく、は…っ」
「ひ、ぁ…、あっ、ラフ…っ」
その間に、互いを労うような会話などない。
がむしゃらに求めてくる彼にしがみついて身を任せるしかないほど、本能的な行為だった。
もう、されるがままの状態の私の腰を、ラファエロが痛いくらいに強く掴む。
限界が近いと分かるほど、彼はハチキレんばかりになっていた。
彼の眉間に深く皺が寄った。
重い息が肌にかかる。
互いに、限界だった。
「い、くぞ」
ラファエロは辛そうな声を絞り出すと、腰をギリギリまで引き、回すようにして突き上げる。
深くまで、息が止まりそうな一瞬に私は声を上げた。
それと同時に、彼が私の中で放たれる熱い感触を受ける。
慣れない感覚に身を震わせた私に、ラファエロが小さな声で呟く。
「悪い…」
と、たった一言。
それは思いやりのないこの行為の果てへの言葉だと私は思った。
だがそれが違うのだと直ぐに悟る。
繋がったままの彼がまた力を得始めるのをはっきりと感じたからだ。
「っや、、ラフ…っ!!」
再び、了承なしに動き始める彼に、私は逃げ腰になり拒むようにその肩を掴む。
私を組み敷いたままのラファエロは肩で息をしながら私を見下ろして、そっと頬に指を滑らせた。
どうやら私はいつの間にか泣いていたらしい。
彼の目に動揺の色が浮かんでいる。
「嫌、か?」
辛そうな声で聞いてくる彼の声は、拒絶されたことへの不安が色濃く出ている。
私はその視線を逸らさぬままゆっくりと瞬きをすると、少しだけ微笑んで首を横に振った。
「違う、嫌じゃないの…ただ、少しだけ、」
言葉が詰まる。
こんな事を言っていいのか、迷っていた。
身体を重ねることに、愛されているという自惚れた自覚があるから、尚更に。
だから、彼の──ラファエロの表情を見るのが辛くて私は、しがみつくように彼に抱きついて下唇を噛んだ。
「…怖かった…怖いって、思った…」
「っ…、」
私の正直な言葉に、彼が息をのむ。
そして、しがみついていた私の身体を抱えるようにして抱き締めると、まだ少し濡れている髪に指を絡めた。
「悪かった…俺も、気ぃ使ってなかったな…」
「…ん…私こそ、嫌な思いさせた…」
ごめんね、そう言って抱き締める彼から離れてソファに引き戻すと、額を当てて、キスをする。
軽く、触れて、また触れて。
彼が三度目のキスの時に、小さく笑った。
「まだ怖いか?」
「…うぅん、…ん、ラフ…、」
首を振ると、ラファエロが優しい笑みを見せて、腰を深くまで沈めた。
そう、まだ最中だったことを今思い出す。
でももう、先程までとは違う。
了承を得るように見つめる彼にキスを返して、私は首に腕を絡めた。
「もう、我慢は出来ないんでしょ…?」
「あぁ…無理だな…っ」
「んっ、」
今度はゆっくりと、焦ることなく彼が動く。
ジワリと汗が滲み、熱い吐息が互いに漏れた。
彼の指がスルリと身体を覆っていたタオルを解く。
露わになった肌に暖かな口付けを落として、直にその胸に触れる。
「布一枚で見えないってのは、結構、ソソるよな」
「な、にそれ…フェチっ、てこと…?」
「いや、本能…だろ?…露わにしたいって、本能だな…」
「っ!!あ、ぁっ…」
指で、唇で、弄ぶように触れる感覚に、身体の芯がゾクゾクと震える。
熱い鉛を流されたような火照りに、吸い込む息も喉で止まる。
眼下の彼が、意地悪く舌を覗かせて笑ったような気がした。
「今度から、あんな美味そうな格好で、彷徨かない事だな…っ、理性も弾けちまう…!!」
彼のその言葉が、その日最後に覚えている忠告。
以後、私は出来るだけ守るようにはしているんだけど、どうやら彼の本能を刺激するのはそれだけではないようで…
チェック・メイト
彼の腕でまた、クイーンは敗北を期すのだった。
⇒管理人ライスのぼやき