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□無題
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何故背後を取り、何故耳に吐息を吹き込むように喋るのかが理解できない。
鳥肌が立ち、立ち竦んでいたがハッとし身を離す。
ニコニコと笑顔で立ったままのアッシュは、手紙を差し出してきた。
それは言わずとも、女王陛下からの手紙であるのは分かっている。
アッシュの事であるから、お茶のみ友達のタナカさんが屋敷に入れたのは理解出来る。
この辺りには特に見られて困る部屋もないので、アッシュくらいになれば自由に歩いてもらっても構わないのだが・・・



「あ、て・・・手紙ですか」


「はい。タナカさんとは先程お茶をしてまして・・・」



セバスチャンが見当たらなかったので、探してました。
笑顔のままそう答えるアッシュに、だったら何故声を掛けるだけでいい所を背後を取るのだと・・・
言いそうになったが、何か嫌な予感がした為その言葉は呑みこんだ。

手紙を受け取った所で、肩に触れられ思わずビクリとする。
その様子にアッシュは苦笑して、糸くずですよと答える。



「ああ・・・ありがとうございます」


「いえ、ではそろそろ私は戻りますね(名残惜しいですが)」


さっさと踵を返したアッシュの、腰辺りに視線を落とし思わず固まった。
白い服の合間に見えた、黒い何か・・・
見間違いでなければ、それはセバスチャンの下着で・・・

見間違うはずがない、だって悪魔だもん
視力は人間と比べるまでもない、だが見間違いであって欲しいと願わずにはいられない。
セバスチャンはふいに、泣きたくなった。



「何で私の周りはこんな変態ばかりに・・・」


誰かが言っていた、強かに生きろと。
今はその言葉に、励まされている気がする・・・

ココの所、一応私物に入るものが少しずつ消えているのには気づいていたが…
まさかこんな風に、消えているとは思いもしなかった。
いっそ知りたくもない事だ

うるさい足音と、見知った気配が近づいてい来るのに
セバスチャンは眉間に皺を寄せ、不機嫌そうに目を細める。





「セバスちゃぁあああん!」


「チッ、私は仕事があるので邪魔をしないで下さい。グレルさん」


「あん★いけずぅー、それよりセバスちゃん!何でアタシ以外にパンティとかあげちゃってるのよぉお」



その言葉に思わず固まっていれば、気持ち悪い動きで近づいてくる。
アタシ以外という事は、つまりなくなっていた下着はアッシュだけではないという事で・・・
断じて、あげてなどいない。
ああ、もう寒気とか嫌悪感の溜まりすぎで吐きそうです。
相手にするのも疲れてきて、くるりと踵を返す。
まだブツブツと何かを言っているグレルを放置し、セバスチャンは急ぎ足でその場を去った。


全く用事がない訳ではないが、別に今報告する必要も無い伝言
このときばかりは、それに感謝したい。
シエルであれば例え我儘や、厭味を言われようとも
先程までのあの精神的苦痛よりは、遥かにマシである。
という事で、セバスチャンはシエルの元へ現実逃避するために急いでいた。



「失礼しますっ」


「おい!何だ騒々しい!」


「申し訳ございま・・・せ」


ノックも疎かに、勢いよく入ってきたセバスチャンにシエルから叱咤が飛ぶ。
素直に謝罪しようと、顔を上げ・・・固まった。
シエルは仕事をしていた、机に座りいつものように書類を手に・・
だが幻覚だろうか、気のせいだろうか・・・いっそ夢であってほしい。
書類の合間に見える物体が、自分の私物に見える。
いや・・・明らかに、シエルのものではない。



「そ、それ・・・は」


「ん?ああ、何だ今頃気づいたのか」


セバスチャンのペンやら、手袋、言いたくもないが下着が・・・
シエルは嫌な笑みを浮かべたまま、セバスチャンの反応を見ていた。

足元からガラガラと何かが崩れていく感覚に、いっそその場に崩折れてしまいたい。



「最近お前のモノを盗む馬鹿が増えてきた訳だが・・・何簡単に盗られているんだお前は」


「それを坊ちゃんが言いますか」


「何を勘違いしている、僕はお前の盗られたモノを没収と称して取り返してやっただけだ」



足を組み、見下すように目を細める。
らしくない早とちりに、セバスチャンはますます憂鬱感に溺れる。
溜息がし、シエルが近づいてくる気配にゆるゆると顔を上げる。
見下ろしてくるその顔は、どう見ても―・・・



「大体、お前の身体の全て知っている僕が・・・わざわざ物を盗んでどうするんだ」


「・・・・・・」


ニッコリ笑みを浮かべられ、思わずビクリと肩が跳ねる。



「頭の天辺から、爪の先まで・・・身体のナカも余すことなく」


「坊ちゃん・・・」


「セバスチャン」


言い募ろうとするが、ピシャリと遮られ―・・・










「悦べ、お仕置きだ」



タイがなくなり肌蹴ていたシャツから覗く、首筋に噛み付かれ
小さな悲鳴が漏れるが、そんなもの最初だけにすぎない。


その日セバスチャンは散々嬲られ啼かされ、ベッドに転がされていた。
回収された私物は、シエルが大切に保管していたとは知る由も無い。





END









あとがき
桂様、このようなブツが出来上がってしまいましたがいかがでしょうか・・・
最終的にはギャグに走ってしまいました^^;
どちらでも可という言葉に甘えてしまい、申し訳ないです;

クレームは桂サマのみお受けいたします。
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