MAIN2

□邪魔はさせない
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腹が満たされると、どうしても眠くなると言ったら子供扱いされたのが記憶に新しい。
だが事実なのだから仕方ない、それにその後膝枕で昼寝という最高の寝心地だったのだ。
子ども扱いされたことは、水に流しておいた。

そんな訳で、シエルは本来ならば眠くなる時間。
だが今日はデート、それにいつ邪魔が入るか分からない緊迫もある。
それを恋人のセバスチャンに悟らせる訳にはいかない…


「シエル、大丈夫ですか?」


「ああ、今日は…デートだからな、寝るなんて…勿体無いだろう」


先程からスッキリ系のガムを食べ、多少眠気が覚めてきた。
そうだ昼寝もセバスチャンといるのなら、勿体無かったがあれはゆっくりと家にいるからこそ。
今日は遊園地といった、外でのデートだ。
いつも邪魔される事から、どうしても限られた室内デートしか出来なかったのを
今日やっと念願の屋外デートが出来たのだ。

寝てたまるか、邪魔されてなるものか!!



お化け屋敷でセバスチャンが誰かにセクハラされたり、何故か男二人だというのにナンパをしてくるバカな男もいたり
勿論邪魔者も遭遇し、必死に撒いたりとシエルは疲れ果てていた、精神的に。
何故この広い敷地内で、たった数人の邪魔者と出会ってしまうというのか…
唯一の救いはといえば、隣にセバスチャンがいてくれている事だ。



「大分暗くなってきましたね」


「ああ、じゃあ…次のを最後にするぞ」


セバスチャンの手を引き、人ごみの中さり気なくぶつからないように庇う。
それには当然セバスチャンも気づき、照れくさそうな申し訳なさそうな顔をしている。
長い列の後ろにたどり着くが、シエルはそこには並ばずスタッフの元へと行く。
並ばないんですか?という声には、いいんだと一言だけ答える。

受付をしているスタッフに、持っていたチケットを見せれば
営業スマイルで入口を開けてくれた。
順番ではなく突然割り込む形に、多少不満な声があがるが
そもそもチケットを取っておけば、こうして列に並ばず入れるのは知っている人は知っているものだ。
ついでに言えば、しつこいようだがシエル達二人は美形。
いくら薄暗くても、ライトアップされた遊園地だ普通に見える。
見惚れている女はまだしも、男は死ねばいい。



「チケット、取ってたんですか?」


「当たり前だ、お前に待たせるなんて事はさせたくないからな」


ゆっくりと動く観覧車へと、二人は乗り込む。
夜の遊園地での観覧車は、驚く程に人が多い。
それも恋人同士の夜の密室とか、他にロマンチックな理由とか様々だ。
シエルも勿論そのつもりで観覧車をラストにし、チケットも取っていたのだ。



ゆっくりと流れる景色に、やわらかな雰囲気が漂う。



「今日は、楽しかったか?」


「勿論ですよ」


「そうか」


ふっと笑って、ポケットに手を入れる。
一日中気を張っていたせいか、どっと疲れた気がする。
だがこうして二人でいれる事は幸せで、そんな疲れなど大した事はない。




「セバスチャン」


「?はい」


「これをやる」


差し出された小箱は、一目で安っぽいものではなくそれなりに高価なものだと判断できる。
シエルは親を頼らない、バイトだけで頑張っているというのに
たまにくれる贈り物は、どれも高価なものが多かった。
セバスチャンからしてみれば、気持ちだけで充分だと思うのだが
シエルからすれば、やはり贈り物に質素なものはいただけないようだ。

空けてみろといわれ、そっと開く。



「これは…」


「お前は僕が知るものだけでも、かなりの数の仕事をしているからな…」


「だから、ネックレスなんですね」


チェーンに通されたそれは、シンプルな指輪だった。
手を使う事を考慮し、わざわざネックレスにしたらしい。
その思いが嬉しくて、思わず抱きついた。
グラルと観覧車が片側に重心がいき、傾くが二人はそんな事気にならない。



「ありがとう、ございます」


「そんなに嬉しいのか」


「当たり前ですよ、これは―…」


「ああ、プロポーズと受け取って構わない…で、返事は?」




答えなんて、決まってるじゃないですか―…












「…セバスチャン・ミカエリス、一体何処にいると言うのでしょうか」


ウィリアムは、捜索する為に乗り物に乗り込んだはいいが
ゆっくり動くものの、高さが上がり人が見えなくなった事に失態に気づく。
だがまさか、自分の乗った後に続いたのがシエルとセバスチャンだとは思わなかった。




後日、アクセサリー等一切つけないセバスチャンがネックレスをしているのに気づき
またそれが指輪の形だという事に、ショックを受けた者が多数…いたとかいなかったとか。




END
景さま、お待たせしました^^
思った以上に長く、そしてぐたぐだした内容になってしまいましたが…;
いかがでしょうか><

勿論邪魔者たちはこの後も闘志を燃やすのでしょう
景さまのみクレーム等受付いたします。
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