MAIN2

□邪魔はさせない
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「平日なのに人が多いですね」


「人気だからな、優待券がなければ入場にも時間が掛かるところだった」



その為に作りたくもない借りを父に作り、このチケットを手に入れたのだ。
それに関して父であるヴィンセントは、借りなんていらないのにとは言っているが
それはシエルのプライドが許さない。


『シエルも本気の相手が出来たんだね、いつになったら私たちに紹介してくれるんだい?』

『そうよシエル、お母さん楽しみにしているから』


…大変申し訳ないが、まさか息子の恋人が男だとは思うまい。
親には悪いが、跡取りや孫は…養子くらいしか無理だ。
シエルはセバスチャンを離すつもりはないし、引き離そうとする相手には容赦をするつもりは全くない。


平然を装いながらも、嬉しそうにそわそわしているセバスチャンを横目に入場口へと進む
まわりの女性陣がキャアキャアと煩いが、ガン無視だ。
少しでも隙を見せれば、奴らは群れをなし襲い掛かってくる…逆ナンという襲撃を…。

自分は勿論の事、セバスチャンも当然女性にモテる。
人当たりがいいというか、気がきくせいで老若男女問わずという厄介な恋人だ。


さて…



「まだ人が少ないから、人気な乗り物優先するか」


「そうですね、並んでいるだけで長時間使ってしまいますから…私は、シエルと一緒ならそれもいいです、が」


「……」


語尾がどんどん小さくなって、赤くなって俯いた。
そんなセバスチャンに、シエルは滾る。
何だこの可愛い生き物は、今すぐ抱きしめてキスをかましてやろうか!
…なんて事を思いつつも、理性を総動員しなんとか抑える。
そんな事をしてみろ、数日は口をきいてくれなくなるのが分かっている(経験談)
せめて、とセバスチャンの手をとり歩き出す。

そういえば、手を繋いでデートはまだした事がなかった。
恥ずかしがるセバスチャンを、他の誰にも見せたくなかったのもあるが。



「みーつけた★」


「え、シエル?」


「早く行くぞ、確かこの乗り物は先着で今日はプレゼントがもらえた筈だ」



シエルの耳に、聞きたくもない声が聞こえ
早足になり少し小走りに変わる
突然の行動に、セバスチャンは意味が分からない。
可哀想でもあるし、このゆっくりとした時間を邪魔されるのも最悪だ。
だがここでセバスチャンが向こうに気づき、追いつかれでもしたら全てが台無しになる。

いや待てよ、幸い…


「グレルがいた…」


「……そうですね、急ぎましょうか」


セバスチャンは、グレルに対し激しく嫌悪感を抱いていた。
どうやら事あるごとにセクハラをしてくるオカマに、いい加減堪忍袋の尾が切れたというか…
だがセバスチャンなりに制裁を下したにも関わらず、以前より余計に付き纏われるようになったといっていた。
だからココは気づかせないよりも、居たから回避しようとさせた方がいいと判断した。

声はすぐに小さくなり、丁度シエルとセバスチャンの通った後を横切る団体が…
その団体に邪魔をされ、グレルは人ごみに消えた。



「…撒いたようだな」


「…全く、ウィリアムさんも何故手綱を放すんでしょうか」


グレルはウィリアムのペットという認識らしい
そしてペットの責任は、飼い主の責任。
何かと仕事面で突っかかってくるウィリアムが、正直嫌いでもある。
そんな訳でグレルが何か仕出かす度に、ウィリアムの株がセバスチャンの中で急降下していくのだが…
本人達は知らない。

走っているうちに、向かっていた目的の乗り物まで来てしまった…。



「この人数ならすぐ順番がくるな」


「はい、あ…洞窟を抜けたあと急降下し落下する感覚が味わえるとあるんですけど…っ」


さり気なく手を繋げば、一瞬驚いたようにシエルを見てきたがゆっくりと握り返してきた。
その頬は赤くなっていて、シエルは咄嗟に顔を逸らす。
こんな状態ではいつまで経っても初々しいようなカップルから、抜け出せないのではないだろか…
男としてどうなんだ(いや、セバスチャンも男だというのは置いておく)



「…写真撮られるみたいなんで、変な顔にならないといいですね」


「あ、ああ…そうだな」


そんな二人を他所に、周りは色めき立っていた。
カップルは勿論いるのだが、女性客も多いこの中
長身なのを抜きにしても、セバスチャンとシエルの容姿は飛びぬけていい。
そんな二人が手を繋ぎ、雰囲気がアレであるなら余計に目立つ。


(やだっ絶対カップルよコレ!)

(えっ嘘嘘、どっちもいい男なのに勿体ないぃー)

(どこが!寧ろ滾るわwww←●女子)



二人の知らない所で、色んな妄想やら想像が繰り広げられていた。

そしてこのアトラクションで、セバスチャンが事前に言っていたというのに
残念な写真が出来上がっていた。
二人の表情がという事ではない、何故か映り込む人影があったのだ…。







「シエル、写真見ないんですか?」


「い、いや…その、変顔になったのをお前に見られたくない」


「私は、どんなシエルでも好きですよ?」


「っっっ!!!??お、俺が気にする。お前にはカッコイイ所を見せたいんだ」


「シエル…」



ぐいぐいと痛くない程度に腕を引き、その場を急いで離れる。
花やら甘い雰囲気を残し、慌しく去っていく。
そんな二人の去ったあと、ゆっくりと写真を見ている他の乗客



「あれ?」


「どうし…なにこれ」


乗り物に乗っていた全員の写真があったのだが、丁度シエルの部分に何かが被っている。
よくよく見ればそれは人で、このカメラが設置されている場所に迷い込んだのだろうか…
うっかりタイミングよく映っていた。




「早すぎてよく見えなかったぞ!」


「でも確かにセバスチャン殿でしたよ?」


「確かに此処にいるんだな、早く見つけるぞアグニ!」


「は、はいっソーマ様が初めて惚れたお方ですからね」


アグニとソーマ
外国留学生としてインドからやって来た二人、そんな二人に色々と教えてくれた大学臨時教員のセバスチャン
ソーマは嫁に連れて帰ると言い出し、アグニはソーマの元にセバスチャンが嫁げば
使用人として働くアグニ、要は一緒に暮らせるのだから幸せという結論。

そんな会話を繰り広げていた二人は、警備員によってそのアトラクションからは抓み出された。
流石のアグニも警備員相手に騒ぎを起こさず、つまみ出された後ソーマの身を整える。



「さて、探すぞアグニ!」


「はい!」






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