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□恋は幾つになっても
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セバスチャンが仕える以前から、ファントムハヴ家に使える家令
タナカは不思議な人間だとセバスチャンは認識している
どこでもいそうな人間であり、それでいてセバスチャンが気にせずにはいられない存在だったからだ。

それはタナカのセバスチャンに対する接し方に問題があるのではと、少し考えて見た。
まるで親が子を見るような眼差しだという事に、気づき首を傾げる。
仕事も完璧にこなし、何事もやり遂げる自分のどこが子供のように見えるというのか。

見た目の問題ではないのかもしれない、もっと違う所に何かあるのではないだろうか。
それより自分が何故気になるのかを考えてみる。

人間には生きた年数で、達観した所が見えたりするがそれが一際タナカには見えるのかもしれない。
優位に立つのを引き摺り落とし、命乞いをする人間を今まで見てきた事はあったが・・・
同じ目に合わせたとしても、タナカは決して屈しないのだろうと思う。
そういう所を無意識に見て、好意を抱いたのかもしれない。



「セバスチャン」


「タナカさん…?何かありましたか?」


呼ばれる度に、どこか安堵感を抱くのは何故か。
恐らく周りにいる人間が幼すぎ、精神的な疲れを感じているからだろう・・・。



「本日のスイーツなのですが、坊ちゃんが以前試作をと言っていた企業からの物が漸く届いたので」


「ああ、では其方をお出しすればいいんですね」


「はい、お願いします・・・ああ、そうだ」


一旦踵を返したタナカは何かを思い出したらしく、再びセバスチャンに向き直り。



「はむ、っ??」


小さな何かを口に入れられ、親指で下唇を拭われた。
一瞬香った甘い匂いと、口の中に広がる控えめな甘みから先程話していた試作品の菓子なのだと理解する。
ニッコリと温和な笑みを浮かべ、おいしいですかと聞いてくる。
正直人間の食べ物は口に合わないのだが、決してマズくはない。
そして人間の味覚、坊ちゃん的には美味しいと判断できる味だった。



「・・・はい、美味しいです」


「坊ちゃんには内緒ですよ」


まるで悪戯っ子のようなタナカに、何故か顔が熱くなるのを感じる。
え、一体何故・・・


「後は頼みましたよ」


「・・・ぁ、はい」


年齢もそれなりで、達観した大人で
時折見せる表情が何故か子供っぽく・・・。
落ち着いた物腰で、自分に触れる時はどこか優しく―・・・



「???」


よく分からなくなってきたが、タナカの言動に一切嫌悪感も抱かないのだから
別にどうでもいい事かと、セバスチャンは懐中時計を見て動き出す。
そんな事よりは、業務を優先するべきだ。






燕尾服の尻尾をヒラヒラと揺らし、静かに音もなく去っていくセバスチャンの背中を見て
タナカはくすっと笑う。


「セバスチャンも、まだまだですね」


自分の感情も理解出来ず、結局それを途中で知ろうとする事を止めてしまった。
それなりにアピールをしているつもりなのだが・・・
ここは悪戯に長引かせず、直球勝負でいくべきか。
けれど気づいていない時でもあの反応、あれを見ていると楽しくて仕方がない。
もう少し、現状のままでいいか・・・と、タナカは静かに笑う。


この年齢になってまで、恋をするとは思わなかった。
年齢なんて関係ないと、誰かが言っていた気がするが
確かにその通りだと、今は思う。



「ほっほっほ、こればかりは負けられませんからね」


セバスチャンに対し同じ思いを寄せる人間が、他にもいる事を知っている。
タナカは全員分かったのだが、向こう側は誰一人としてタナカをライバル視している者はいない。
でもそれが命取り、今の所タナカが一番セバスチャンの心を掴んでいるといえよう。


さて、結果は―・・・?








END
リクのあったタナセバをば。
男の人って何歳になっても子供っぽい所があるから、タナカさんもそんな所あってもいいなと思いながら書きました。

セバスチャンにとっては、人間のタナカさんは年下になるんでしょうけど←


タナセバ読みたいって方がいたので、書いて見ました(`・ω・´)+
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