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□灰になったテディベア
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「…なにそれ」
アロイスは目を瞬かせ、目の前の物体を見つめた。
つい最近手に入れた悪魔、セバスチャン・ミカエリスを自分の執事にと傍におかせていたのだが…。
美しいものは好きだし、何より契約を結んだ仲だ。
「先日のパーティーにご招待いただいたコルイーク伯爵からなのですが…」
当のセバスチャンも最初こそ内心嫌々従っていたが、最近では大人しくなってきたように思える。
いい匂いもするし、嫌がるセバスチャンを無理矢理同じベッドに引きずり込むのが日課なくらい気に入っている。
そんなセバスチャンが抱えているのは、彼の上半身を覆うほどの大きなテディベアだった。
パーティーで会ったコルイーク伯爵…
アロイスは人物を思い浮かべ、舌を出しおえっと気分悪そうに顔を顰めた。
「アイツが?キモっ!!」
ハゲ散らかし、無駄についた贅肉はまさに豚。
ニヤニヤと自分を棚に上げてなんだが、貴族としての品がない。
本当に気に入らない男になったのだ、つい先日。
首を傾げているセバスチャンを、思わず睨み付ける程に余裕がない。
だってそうだろう、事もあろうかあのジジイはセバスチャンをそういう目で見ていたのだから。
こっそりと耳打ちしてきた言葉は、下世話な事ばかりで金にモノを言わせ一晩貸せとまで言って来た。
何より最初はアロイスにも、そういった類の声を掛けてきた変態だ。
苛々する気持ちを抑え、テディベアを色々な角度から眺める。
何か良からぬものがついていないか、気になって仕方がない。
「ん?コレ…」
「お手紙のようですね」
「えーとぉ、何なにー…」
手紙に視線を落とし、肩を震わし始めたアロイスにセバスチャンは何事かと思う。
感じるのは確かな怒り、何か気に食わないことでも書いてあったというのだろうか…。
「アロイス様?」
「そのクマ、君宛みたいだけど」
「……は?」
大人の男相手に、しかもたかが一介の執事に?テディベアを?
何を馬鹿な…とは思ったが、ピラリと見せられた手紙には確かにあて先がセバスチャン・ミカエリスになっていた。
ぞわっと鳥肌が立ち、テディベアを抱えているのが嫌になった。
今すぐ投げ捨て…いや、燃やしてしまいたい。
「コルイーク伯しゃ…ああ、いいやあのクソジジイはセバスチャンの尻の孔に突っ込みたいんだろうね」
「は!?」
「そーゆー男だって、この前のパーティーでも迎えに来たセバスチャン見て涎垂らしてたんだよアイツ」
ポトリと可愛らしい音をたて、テディベアが床に転がった。
それをただジッと見つめるアロイスに、ハッとなる。
慌てて拾いあげると、埃を叩く
「いーよ、嫌なら捨てて」
「え、いいんですか?」
「気持ち悪いしね、寧ろ燃やしちゃってよ」
笑顔で焼却炉に向かうセバスチャンの背を見つめ、アロイスは思案するように目を細める。
テディベアの首に巻いていた赤いリボン
「でも、セバスチャンに付けたら似合いそうだね」
あんなキモいテディベアなんかより、可愛いセバスチャンがいい
セバスチャンは自分のモノだから、ソレに何かを与えるのも自分でなくてはいけない。
そうと決まればリボンを買わなくてはいけない。
「セバスチャンに自身に買いに行かせるってのも楽しそうだけど…うーん、今回はルカに頼もっかな」
リボンが届いたら早速あの細い首に巻き付けて、結んであげるよ。
クマのぬいぐるみなんかより、ずっともっと綺麗で最高な飾りだよね
END
題名はあの後セバスチャンによって、無残な姿になったテディベアの末路
題名が思い浮かばなかったので、ギャグでつけときました。