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□またの名を○○VS●●
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悪魔風情が…こうも視界に入り、チョロチョロと動かれては迷惑ですね
視界に入れる事自体が不快極まりないと言うのに、害獣如きにこうも翻弄されるとは…。

ウィリアムは死亡者のリストをパラパラと捲り、思わず溜息を吐く。
こうも疲れる相手がただでさえ傍に一人いるというのに

ふと感じた気配にピクリと眉が動く
この不快な気配は間違いなく、悪魔だ。
だがいつもと違い、心の底から気に入らない匂いがする。
何故とは思いつつも、仕事の邪魔をされても困ると言うもの
ウィリアムはデスサイズを握り締め、気配のした方へと歩みを進める。




**********









アロイスとクロードは屋敷への帰路の途中、馬車の車輪がハマり動かず立ち往生していた。
当然二人だけならば、さっさとクロードが一人で馬車を戻したのだろうが…
生憎と今は馬車に客人が一緒に乗っていた為、どうしようか思案していた所だった。


「クロードぉ、まだ?ココ薄気味悪くてクソ気分悪いんだけど」


「…もう少しお待ち下…っ!!」


「え、うわっクロード!?」



急にクロードに抱えられ、視界が回る
焦ったアロイスが声を掛けるが、彼は庇うように前に立ち反応を返さない。
背から顔をひょいと出せば、元いた場所には見慣れぬ何かが突き刺さっていた。



「…あの害獣ではないのですね、それでも…悪魔には変わりない」


「急に何ですか、主人にも刃を向けてただで済ますと?」


「此処等一帯はまだ回収していない魂で溢れていますからね、つまみ食いされては適いませんので」


釘をさしに…と告げ眼鏡を直したたウィリアムに、クロードは眉間にシワを寄せ眼鏡を直す。
それを見たアロイスは緊張感もなく、爆笑した。
なんなんだと訝しげにウィリアムが視線を向ければ、腹を抱えてあろう事か指まで指していた。



「あはははっ!なんていうか、眼鏡VS眼鏡って感じで笑えるよね」


「「……」」


その言葉に二人の眼鏡は沈黙した。



「悪魔と一緒にされるのは不愉快ですね、まだセバスチャン・ミカエリスの方がいくらかマシ―…」


そこまで言って、目の前の二人の雰囲気が変わったのに気付く。
反応を示したのはセバスチャンの名前、ウィリアムは知らぬ内に不愉快さが増していくのが分る。



「え、何?このデコっぱち眼鏡…セバスチャンの事知ってるワケ?」


「……何処のどなたかは知らないが、セバスチャンの名前をそう易々と口にしてほしくはありませんね」


…デコっぱち眼鏡、それは貴方の執事もそうなのでは?
そうは思ったが、喋るのも億劫でスルーする事にした。
それよりも、セバスチャン・ミカエリスとこの目の前の二人が知り合い?
本当禄でもない関係を持っている事だと、何故かセバスチャンを内心責めている。


ウィリアムは気付いていないが、惚れた女が男ホイホイだった場合に対する嫉妬のようなものだ。






「ここで始末しておいた方が後々楽そうですね」


「ソレに関しては私も同感ですね、悪魔がこれ以上視界に入られても不快ですから」


始まった戦闘にアロイスは口笛を吹いて、頭の後ろで腕を組む。
いっそこのまま共倒れしてくれれば、セバスチャンは自分だけの…ああダメだ。
そうなったら屋敷の事をやる奴がいなくなるし、他の邪魔者を自分で始末しなければいけなくなる。
そうなるとやはりクロードを応援しなければならない訳で…。


「セバスチャンからの愛だったらきっと満たされると思うんだよねー」


憎しみが憎愛に変わり、いつしか全てを奪ってやりたいとさえ思うようになった。
あの悪魔を捻じ伏せたらどれだけ気持ちが良いか、自分の手で泣かせる事で支配できる優越感がどれほどものもか…想像するだけでゾクゾクする
壊してしまえば、もっと気持ちいのかもしれない。


「壊れた愛でもいいけどね」


それにしても―…と宙を見上げる。
そこには宙を舞う眼鏡…もとい、クロードとウィリアム。
戦闘能力云々より、アロイスにとってはその眼鏡と髪型が似たようなものだというのが面白くて仕方がない。


「あれ?そういえば…」


客人が馬車に乗っていたのを思い出す、だが流石にこれだけ騒いで出てこないのはおかしい。
馬車のドアを開け、中を覗きこみ…
アロイスは呆れ顔で溜息をついた。
思い切り爆睡していた客人に、こんな事ならさっさと馬車をクロードに直させ帰れば良かった。

でも…と、後ろを振り返る




「自覚がないんですか、それはそれで好都合…」


「何をごちゃごちゃと意味不明な、これだから悪魔は―…」


「悪魔悪魔と馬鹿の一つ覚えのように、アレの価値が分からないのならそれでいいですが」


「…価値?貴方程度の悪魔が何を知っていると」



この余興も見れた事だしよしとしよう。
それにしてもあの眼鏡はどうやらセバスチャンに対する、自分の感情を理解出来ていないようだ。




「ほーんと、いい余興だよね」


自分に害さえなければ、何でも面白く感じるものだ。
アロイスは馬車の足掛けに腰を下ろし、二人の眼鏡が争う様を眺めるのだった。




END
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