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□それなりに本気(マジ)です
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「何で生きてるかって所は聞かないでおいてあげるよ」


グレイが笑顔で言い放った言葉を、セバスチャンはヒクつきそうになる頬を抑え笑顔で対応する。
女王の執事が度々こうも側を離れていいものか、少し気にはなるが別に自分には関係ないのでどうでもいい。

何故かファントムハイヴ家に来たグレイに、シエルも相手なだけに追い返す訳にもいかないだろう。
因みにシエルは今は二階の自室にいる



「本日はどのような御用で?」


「ああ、そうだった。はいコレ」


パッと差し出されたのは封筒
勿論何かと聞くまでもなく、女王陛下からのものだろう。
前回の失態に対し、中々いい対応をしてきたというのにすぐコレとは…
流石女王陛下、いい性格をしている。



「…何でしょうか」


「んー?ボクが踏んだ跡もう消えたんだって思って」


ニヤリと笑みを浮かべながら言う事に、何の事か思い出し不愉快になった。
死んだフリとして死体になっていた時、色々と好き勝手されたのは記憶に新しい。
その中でもグレイはまず殺された上に、死んでいる相手の顔を踏むといった暴挙に出たのだ。

正直腹が立って仕方がなかったが、何も出来る筈もなく…



「あの時はゴメンね、ボクも色々と機嫌悪かったからさぁ」


頭の後ろで腕を組み、無邪気な笑顔で謝罪の言葉を述べる。
全くもって謝る気はない事が分かり、顔が引き攣りそうになる。



「だから、跡残ってたらって思ったけどなかったし、でもまあいっかな」


「?」


話の意図が見えず、つい眉を寄せてしまう。
グレイは腕を解き、姿勢を整える
何だと思う暇もなく、その場に傅きセバスチャンの手を取る。

これではまるで男が女性に―…



「責任は取るよ、結婚しよう」


「……は?」


その言葉に固まり、唖然としているとさっさとグレイは立ち上がって
取っていた手を握り引き寄せる、体制を崩したセバスチャンの耳元で囁く


「キミの作る食事はすごく美味しかったし、何よりキミ自身ボクの好みなんだよね」


紡がれた言葉というより、その声色と吐息に思わず赤面してしまう。
そんなセバスチャンの様子に、グレイは満足そうに笑ってキスをする。
ハッと我に返って身を離すと、キスをされた頬を押さえただうろたえる。



「な、た…戯れ事を、大体…好みの相手を足蹴にする方の言葉をどう受け入れろと」


「あはは、まああれだよね…」


キレイな物って眩しいし、穢したくなるって言うか
それなりに汚れ役もする訳で、そんな自分にはもうちょっと汚れていたほうがいいかなーとも思って。
本音を言えば苛ついていたから、というのが一番の理由なのだが。




「んー…どうしよっかなー」


帰る様子もなく、ただ何かを考える仕草をする
セバスチャンとしては一刻も早く帰ってほしい、まだやるべき仕事も残っており
こうして相手をするのも正直嫌だ、疲れる…



「ああ、こうしようよ」


「?」


ポンと手をつき、グレイは笑顔でセバスチャンを見つめる。
手をぎゅっと握られ何なんだとその握られた手に視線を落としていた為、シエルが階段を下りてきて二人の姿に眉を寄せていたのに気付かない。
勿論グレイは気付いていたが、それを指摘する理由もない。



「結婚を前提に付き合おうよ、要はボクをよく知らないから断ったんだよね」


「は!?そんな訳ないでしょう!ですから私は」


「照れない照れない、よろしくね彼女さん」


未来の奥さん
語尾に☆でもついていそうな声のトーンで告げ、グレイはバイバーイと手を振って帰っていった。
茫然とその場に立ちつくすセバスチャンに、背後から殺気のようなものを感じた。
ビクっと思わず肩を揺らし、後を振り返れば不機嫌さMAXのシエルがいた。

気付かなかった自分に驚きと軽くショックを受けるが、それよりも何故ここまで不機嫌になっているかが理解出来ない。



「…坊ちゃん?」


「……何をしている、早く紅茶を淹れろ」


「はい、申し訳御座いません。今すぐに」


グレイの事には一切触れず、ただ小さくそう呟くようにそう言った。
珍しいとは思いつつも、ここでいつものようなからかいを含めた物言いをすれば状況を悪化させてしまうだけだろう。
紅茶の準備をする為に一礼すると、その場を音もなく去った。



「…くそっ、アイツ」


一人残されたシエルは、グレイの出て行ったドアを睨み付けていた。
セバスチャンは契約した代償のある主従関係でしかない、それでも彼が自分が死ぬまではシエルのモノであるのは変わりない。
だというのに次から次へと誑し込むかのように、ああいった輩を増やす。

悩みの種だと思いつつ、頭痛がする頭を気付かぬ振りをしようと勤める。













「あー楽しかった!」


グレイは帰路の途中思わず思い出し、笑いだしてしまう。
面白いと言うのはシエルの反応だった、執着しているとは気付いたがそういう種類だとは

告白している時に軽そうな声色だったが、グレイはグレイなりに本気だった。
勿論諦めるつもりはないし、それにあの反応はなかなか…



「ボクがフツーに手に入れちゃえそうだったよね」


何者だとか男だとか、自分より身長が高いだとかよりも
完璧な執事だと思っていたのに、告白してみるとうろたえて顔を赤くしていたなんて…



「ほんっと、可愛いよね」


なんというか、苛めたくなるのも分るかも…
等と物騒な事を考えながら、グレイはこれからどう口説き落とそうか考えるのも楽しみになっていた。




END
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