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□いつもの君が好き
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目が覚める、ふとそこで違和感を感じた。
昨日は特に睡眠をとってみる気分ではなかった筈なのに、今自分は『起きた』
霧がかった記憶に、不快さを感じる。

身を起こして、そこで更に吃驚する羽目になった。



「……どこですか此処は」


あとサラリと自然に出た敬語にも、寒気を感じた。
だって、自分はこのような畏まった口調を普段しない筈。
見た事のない部屋、自らが着ている服
全てが覚えのないものばかりで、セバスチャンは頭痛がしそうになる。
この状況からして考えられる事は、ほんの僅か。



自分は誰かに攫われたのか
……自分で言っておいてなんだが、この線は限りなく有り得ない。
というより、気持ち悪い…知らぬ間に攫われるという事・そして服まで着替えさせられるなんて事…。



「…記憶喪失、なのでしょうか」


一体何故、だがそれよりそれが一番可能性として高い。
それより今此処でじっとしていて、事態が変わるとは思えない。
『今』の自分は此処で何をしているのか
とりあえず自分の部屋らしき中を見回し、タンスの扉を開ける。


その中には―…



「ね、こ…」


いや、本来服に目がいくべきなのだろうがどうしても数匹いた猫から目が離せない。
ふるふると震える手で一匹を抱き上げれば、柔らかく暖かい。
ぷにぷにと揉むと柔らかい肉球が、物凄く愛しい。
ベッドまで逆戻りし、猫とじゃれ合う様は昨日までのセバスチャンからは考えられない。



「嗚呼、なんて愛らしい…本当癒されます」


ふと癒しを必要とするほど、疲れる何かがある気がしたが今はそれどころではなかった。
ただ猫と触れ合い、至福のひと時。
他の猫もタンスが開かれ、窮屈な場所からの解放に思う思う部屋の中を動き回る。
ベッドが一番心地いいらしく、セバスチャンの周りに寝転がったり丸まったり。

まさに猫まみれ









「セバスチャンさあああーん!」


叫びともとれる声と共に、部屋がノックされた。
セバスチャン、それがどうやら此処での自分の名前らしい。
ハッと現実に引き戻されたように、少し寂しく感じつつも猫を下ろす。



「…」


しかしタンスの中に入れるくらい、隠さなければならない事なのだろうか。
だとしたらこのままドアを開けるのは、ある意味自殺行為になるのか…いや流石にそこまでではないだろう。



「セバスチャンさーん?」


「ま、まさかっ倒れてたりするかもしれないだよ?!そ、そしたら介抱…」


「ええ?!じゃあ蹴破りますね!」




止める間もなく、ドアが蹴破られた。
かなりの騒音が恐らく大きいであろう屋敷に響き渡る。




「「「…」」」


思わず猫を抱きしめて、固まってしまった。
金髪で格好からして庭師の少年と、メイドの女性もなだれ込む形で固まっていた。



「…どちらさまですか?」


とりあえず、記憶にないのだから聞いてみた。























「「えええええええええ!!!!」」



まさに騒音、こんな二人と一緒に暮らしていたのかと思うと頭痛がしそうです。




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