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□いつもの君が好き
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「で」


「で、だけじゃ分からないと思うぞシエル」


セバスチャンはソファに座らされ、そして部屋の中には先程の二人も含め数人。
フィニとメイリンの叫びを目覚ましにしたシエルは、不機嫌そうに眉間に皺を寄せたまま。


浅黒い肌の少年が眼帯の少年を宥めている、他の人間の態度からしてこの屋敷での上の立場だとは分かった
その浅黒い肌の少年は同等の立場なのだろうか…



「で、セバスチャン」


「私の事ですよね」


「…そうだ、それでお前は僕の執事でこの屋敷…ファントムハイヴ家に仕えている訳だが。今の時点で分かる事は」


会話の中で多少は名前は把握できたが、出来れば最初に名乗って欲しかった。
ゆるく首を振れば、シエルはさらに眉間の皺を深くした。


「あ、記憶がないのなら自己紹介は必要だな!俺はソーマ、インドの王子だ」


「ハッ失礼しました、私はソーマさまの執事のアグニと申します」


「私は家令勤めさせていただいております、タナカと申します。先程の会話でお気づきかとは思いますが此方の方がファントムハイヴ家当主、シエル・ファントムハイヴ様でございます」


「右からー料理長のバルドさん、家女中のメイリンさん、そして庭師の僕、フィニです「そしてセバスチャンとは深い仲の貿易会社「崑崙」支店長の劉だよ」




室内が音をなくし、沈黙が続く。
シエルは額に手を宛て俯いているため、顔色がどうなってるかは分からない。
あとはタナカを除く誰もが、劉と名乗った男を見つめ…

まあ、いいリアクションをした訳だ。
普通に入ってきていたというのに、どうやら気づいていなかったようだ。
それより先程の自己紹介は理解できたが、最後の劉の言葉が解せない。




「深い仲?」


「あれぇーやっぱり忘れちゃってるんだね、あんなに夜は激しかったのn「出鱈目を言うな劉…来訪は聞いていないのはいつもの事だが無断で入るなと言っているだろう」


シエルが劉の言葉を遮り、淡々と…それでいてどこか怒気を含めて話した。
劉という男は食えない男のようで、そんなシエルの内心を気づいていながらおどける



「大体お前、今日は取引がどうとか言って「セバスチャン!!」…」


今度はシエルの言葉を遮り、誰かが乱入してきた。
ドアを見れば、第一印象は白
とりあえず見ただけで虫唾が走り、近寄ってくる男をとりあえず視界から外したい。


「記憶を失ったと聞きました!一体何があったのですか?!私との熱いあの夜の事までも忘れたと?!」


「…気持ち悪いので離れてもらえませんか?」


「おい、女王陛下の元を離れて何をしている…アッシュ」



白い鬱陶しい男はアッシュと言うらしい、気配からして天使
相容れない存在だというのに、自分に対しこの執着は一体どういう事か。
劉といいアッシュといい、何が面白くて自分をからかっているのか。

セバスチャンはそんな事しか考えつかなかったが
当人達は記憶喪失だという情報を得て、誤った記憶を教えそのままあわよくば…なんていう下心満々だという事は見抜けなかった。



「とりあえず、だ。セバスチャンが記憶がない以上今日はタナカにセバスチャンの代わりをしてもらう」


「畏まりました」


「お前達もタナカの指示に従うようにな」



会話が進む中、両隣に座ってきた二人の男は別に害悪という訳ではなさそうだ…
自分にとっては限りなくそうだとしても…。









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