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□無題
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人と人との出会いはとても大切なものだと、私は思っています。
母国インドを出て、この国に来て様々な事がありましたが今はとても幸せなんです。
実はこの国で私にとってかけがけのない、大切な…まさに運命の相手に巡り会えたんです!
「アグニさん、いつもすみません」
絹糸のような艶やかな黒髪は、サラサラとしていて思わず触れたくなる
私より低い身長のせいか、その紅茶色の瞳は上目遣いで見上げてくる。
ああ、もう…その全てが私を魅了するんです!
触れたい、抱きしめたいっ
「いえいえ、私でよければいつでも手伝います!」
だが相手は同性、恐らくセバスチャン殿にとって私は友達止まり…
せ、せめて友達以上にはなれないんでしょうか…
いつまで経っても何も変わらないのは、勿論自分自身が彼に何も伝えていないからであって自業自得と言えよう
そもそも先に友だと告げたのは自分なのだから、本当…進展するにはやはり自分から何か行動を起こさなければいけないと思う。
「セバ「うわあーんセバスチャンさぁあーん!!」…」
一応、努力はしてみてるんです
でも何故かいつもタイミングが悪いのか、こんな感じで言葉を遮られる。
セバスチャンもアグニが何か言い掛けているのには気づき、どうしたのか問いかけてくれる…
そう、チャンスを必ずくれている
なのに…
「い、いえ!私は特に大した事はありませんのでっ」
「…そうですか?ではすみませんが、失礼しますね」
去っていく背を見つめ、がっくりと肩を落とす。
ああああああ、何をやっているのかっっ
大したことがない…?
セバスチャンからしてみればそうなのかもしれないが、アグニにとっては大した事になるというのに
「はあ…情けないアグニをお許し下さい」
こんな事ではソーマ様にも愛想をつかされて…いやいや、あの方は私にとって神!そんな狭き心は持っていらっしゃらない!!
「…セバスチャン殿、す…す好きです」
「私もですよ」
ああ、こうやって一人で呟く事は出来るというのに…
何故本人を目の前にすると言葉に詰まり、どうしても伝えられず仕舞
いざという時は邪魔が入り、セバスチャンは忙しい身で時間もとれない。
返事はそんなに期待してはいない、でも伝えられずにはいられない。
『私もです』なんて、そんな自分の欲望が聞かせた紛い物の…
「え」
「アグニさん?」
「せ、セバスチャン殿!?え、何故?!先程あちらにっ」
気づけば目の前には愛しい人、僅かに上目遣いに見上げてきていた。
聞けばフィニの仕出かした事は、さっさと終わらせてきたらしい。
「いつも何か言い掛けては遠慮していらっしゃいましたから、そろそろ聞くべきかと思いまして」
「…それで、戻ってきてくださったんですか?」
「ええ、まさか告白されるとは…」
セバスチャンの口から告白の単語が出た瞬間、アグニは顔を真っ赤にさせ慌てふためく。
だが先程のが幻聴でないのなら…
「わ、たしと付き合っていただけるのですか…?」
「私も同じ気持ちでしたから」
アグニの態度はあからさま過ぎて、何も思っていなかったというのに此方までその気にさせられてしまった。
その事は今の所言うつもりもない…と、伏せ目がちに床を見下ろしていた。
ふと反応がない事に訝しむように視線を上げ、目を瞠った。
「アグニ…さ、ん?」
セバスチャン自身気づいていなかったのだろうが、伏せ目に僅かに赤く染まった頬
それを想いを寄せる相手がしたらどうなるか…
アグニは何故か真っ赤のまま、固まっていた。
「アグニさん!?」
バタン―…
極度の緊張と興奮のせいか、アグニは意識を失って倒れてしまった。
流石にセバスチャンも予想外の事に、せめて頭だけでも庇う…といった事もできず唖然とするしかできなかった。
セバスチャン殿…可愛い過ぎますっっ
「やっとくっついたのか」
「セバスチャンさんもアグニさんから言われるの待ってましたもんねー」
「ああっでも折角いい所だったのに倒れてしまっただよ…」
バルド、フィニ、メイリンの三人はアグニがセバスチャンを
セバスチャンがアグニを好いている事はメイリン伝に知っていた。
邪魔をするつもりはなかったのだが、気をつけると返って失敗してしまっていた…
「しっかしあそこは抱きしめる所だろ」
「アグニさん頭痛そうですねー」
「だ、だき、抱きしっ」
この状態だとキスまでいくのにどれくらい掛かる事やら…
ああ、でも…
「全く、手が掛かりますね…」
セバスチャン自身は、どこか幸せそうなのでとりあえずはよしとしておこう。
END
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