MAIN

□選ぶは―…
1ページ/8ページ

セバスチャンside


悪魔と人間の恋?愛?

そんなもの、ただのまがい物でしかない―…

魂を狩るまでの、オアソビ


『愛してる』

それに対し、自分もだと告げる事
ああ何て愚かな、空しい飯事を続けるのか

例えそれで



――…だとしても。











「セバスチャン」


契約した当初、傷付き絶望を叩き付けられ落ちていたあの少年
それでも復讐を誓うドロドロとした魂の叫びはとても甘美な蜜だった
年月を重ね、人間は経験を積んでいくもの
復讐という目的は変わらずあるものの、穏やかな心を持ち始めた事に何故か焦燥に駆られる


「いかがなさいましたか?」


「いや、呼んでみただけだ」


「…?そうですか」


いつからか、甘い視線を感じる事もあった。
それを言葉として投げられた事もあれば、行動にしてきたことも…
ただ自分は復讐の為の駒、いつかもらう魂の代償に従うのみで…受け入れた

人間の考える事など分りやすく、時に酷く曖昧で難しい
感じる負の感情は分っても、理由まではあまり理解できない。
自分は悪魔であり、人間とは違うのだから仕方ないと言ってしまえばそうなのかもしれない。



「お前、は」


「坊ちゃん?」


言いよどむその態度に、訝しげに首を傾げる。
だが決してその先が言葉という音になる事はなく、その小さな唇は閉ざされるのだ。
いつからか、そう…端から見れば所謂すれ違いの状況。



「本当に…「シエルー!!」


「…エリザベス様、ですね」


「…はあ。迎えに行ってこい」


失礼しますと一礼し、部屋を後にする。
言われなければ答えない、そう応えもしない。
そういう生き物だとは最初に教えたはず
理解できない、いや…しようという気になれない。
完璧な仕事をする上では、本来ならその考えはおかしいはずなのに
どこかで拒否をする、それは何故…?



玄関のすぐ傍でフィニとメイリンの二人と戯れる、主人の許嫁のエリザベスを見つけた。
天真爛漫、とても裏社会には関わらせてはいけないような明るく純粋な少女。

エリザベスはセバスチャンに気付くと、パッと表情を輝かせて走り寄る。



「久しぶりね!セバスチャン、ごきげんよう」


「久しぶりにお目に掛かります」


この少女が主人であるシエルを好いていて、それでいてどこか闇を漂わせる事を敏感に察知する。
彼女なりのやり方で、シエルを励まそうと奮闘する様は微笑ましいのかもしれない。

折角闇に染まるいい魂だというのに…



「…いけませんね」


「何か言ったかしら?」


「いいえ、何でもありません」


ニッコリ微笑んで、中へ通せばパタパタと可愛らしく後を着いてくるのではなく隣を歩く。
小さな歩幅に合わせ、ゆっくりと歩みつつエリザベスの会話に相槌をうつ。
シエルが一番だと言うエリザベスだが、決してセバスチャン達使用人を蔑ろになどしない。
それが美点であり、そしてとても…



「ねえ、セバスチャン…」


「どうか致しましたか?」


「シエル、は…私の事本当に好きなのかな」



いつも繰り返される問いかけに、いつものように答えるだけ



「坊ちゃんは感情に嘘を付けるような方ではありませんよ」


ふわりと笑って言えば、明るく表情を変え安心したようにホッと息を吐く。
シエルの傍に行くとあまり行儀がいいとは言えないが、走って去っていく。


…認めてはいけない


頭の中で警告が鳴る



「私は、坊ちゃんを…」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ