MAIN

□私、腐敗してましてよ
16ページ/16ページ




「遅い」


「申し訳ございません、…で、どうされたのですか?」


人間で言うならば不可能
そんな短時間で来たというのに、シエルは不機嫌そうにセバスチャンを叱る。
子供の癇癪だと受け流そうと、セバスチャンは平然と対応する。
またそれがシエルを怒らせるとは、知っているがあえてそうする執事である。

そんなセバスチャンの対応に、予想通りイラっと来たのか更に不機嫌になる。
だがシエルの機嫌の悪い理由までは、流石のセバスチャンも理解は出来ない。


「もういい、喉が渇いた」


「…?この旅館のはお口に合いませんでしたか?」


「…ああ、タナカが好きそうだが僕は紅茶の方がいい」



飲みかけのカップには、透き通った緑色のお茶が残っていた。
(温泉=旅館=緑茶とか日本茶系っていうことね☆)
口直しがしたいのだというシエルの為に、セバスチャンが持参したティーセットを取り出し準備に取り掛かる。
…本当どこに持っていたのかという疑問は、流石にもうツッコミなどしない。


せっせと用意しているセバスチャンの姿を見ながら、シエルは内心複雑な心境だった。
半ばアルカに乗せられた感は否めないが、後ろの初体験を奪ったのは自分。
だがこれで自分だけのものに出来たのだというのは、流石に思ってはいない。
執事として、契約者としてならば自分のモノとして扱えるが…。
邪魔者共からの求愛全てから、セバスチャンをヤられぬよう妨害するのは無理がある。
命令すればいいだけの話なのは、理解しているが…

僕以外に触れさせるな、なんて言おうものなら
馬鹿にされるのが分かりきっている。




「坊ちゃん?」


「あ、…?」


「淹れましたけれど、どうかされましたか?」



小首を傾げ聞いてくるセバスチャンに、何でもないと言ってカップに口をつける。
その美味い味にホッと息を吐き、背を向けたセバスチャンを観察する
…危機感というものを、抱くようになったのは
セバスチャンをアルカの口車に乗せられ、抱いた翌日からだ。

何故かというならば、この馬鹿…



無駄にエロくなったのだ。

振りまくフェロモンとでも言えばいいのか!?
余計に邪魔者が増え、いい加減そろそろ手を出される可能性が出てきてしまったのだ。
アルカに嗾けられ(しつこい)、抱いたが
あのアルカはちょっとオカシイ、いやちょっとではないが…
とにかく、セバスチャンを自分の娯楽の観察に使っている。
それは自分も含まれているが、問題なのはその娯楽がイヤらしいという事だ。

知りたくはなかったが、独り言でブツブツ言っているのを偶然聞いてしまい
それ以来ある意味アルカが怖くて仕方がないのだ。
裏切りやファントムハイヴ家をどうこうするのはないと、断言出来る
そもそも、そのような賢さもなければ、頭の悪さはすばらしいとしか言えない。

あれはある意味駄目だろう…。



『ふふフ腐腐、セバスタソふつくしすぐるwwwあの腰マジエロくね!?ハアハアその細腰ひっつかんでケツにピーぶち込んでアンアン言わせて啼かされてほしいwああぁああ、セバスタソなら絶対孕める中だし万歳だしwこうドピュっと---【省略】---早く誰か手ださねーのかよ、マジけしかけるかw?』


…あの台詞を聞いてしまったが為に、焦燥感が募ったというのもある。
あのまま手が出せないままであれば、どこぞの馬の骨にセバスチャンが食わされる所だったんだ。
いや今もその危険性は全然、全く、なくなってはいないのだが…。



「はあ…」


「溜息まで吐かれて、本当に何かありましたか?」


「…あえて言うならアルカだ」


「…ああ」


アルカ、その一言でセバスチャンも納得したようだ。
セバスチャンとシエルではその意味合いが多少異なるが、まあ間違ってはいない。

何故かあの女は女王陛下と普通に会話し、何故かそれにメイリンもいるという
女王陛下は何を考えているのか、あのある意味言葉の通じない女と意志の疎通ができたというのか。
楽しそうに会話をしている事から、それは間違いないとは思うが…。
まさか、女王陛下もアルカと同じような考え方を持っていると!?

そこまで考えハッとする。
それならば今まで感じた引っかかりの謎が解ける
セバスチャンと一緒にいる時に向けてくる、なんとも言えない視線
セバスチャンと他の誰か(男)がいると、向けている視線
全て思い返せば、アルカと同じではないか!!
なんという事だ!まさか同類だとは思いもしなかったっ!

そうなってくると、最近一緒にいるメイリンは恐らく既に…毒に犯されている。



「坊ちゃん?大丈夫ですか」


「…無理だ、アイツのせいで頭痛が治らない」


それは…ご愁傷様です。
そう言い放ったセバスチャンに、コイツ犯してやろうかと思った90%本気で













「いやぁあああ!!!」


「ど、どうしただか!?」


「よくよく考えれば宿泊明日帰るじゃん!まだ萌え足りないよ!?いやんばかんソコはダメよ!なシーン一回も見てないっ妄想でしか!!」


残念そうな顔をするエリザベス様、ああ本当同じ腐女子とは思えない上品な…。
ああああああああああ
そうなると女王陛下とも明日でさよならする訳だ、語り友がいなくなる
いやだ、寂しい、死んじゃう



「ならば、今晩アッシュを差し向けましょう」


「おぉおついにアシュセバですか!?ハァハァ」


「今晩こそ見れるだか!?その、あの・・・セバスチャンさんの…だはっ」


興奮のし過ぎでメイリンダウン!!
まだまだだなメイリン、その程度の妄想で倒れるなんて。
ここはいっそ、そうですね
天使と悪魔なのだから、人間では不可能なプレイをしていただきたい。
私の頭じゃちょっと想像出来ないけど!
触手?王道ですね!バッチコイ☆ですわ








「くしゅん!」


「おい、どうした…お前悪魔だろ」


「風邪などではありませんが…何故でしょう、嫌な予感がしますね」


くしゃみをしたセバスチャンに、シエルは驚いたように振り向いた。
風邪ではない、嫌な予感
その言葉に、シエル自身が嫌な予感がし悪寒が走る。
まさか、あの悪女共が動いたというのだろうか
まずい、いくら主人である自分が優先とはいえ
相手が女王陛下ともなると、そうもいかない


最悪最強…最凶のタッグを組んだなアルカめ!!!






前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ