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□番外
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「ジェフの兄貴また拾ってきたし!」


「これ以上増えてどうすんだよー」


「うるさーい!拾ったもんは拾ったんだし、お前等も人のこと言えないだろ!」



4、5人の少年と、足元をうろつく犬や猫。
勿論少年達は青年…ジェフが拾ったが、犬や猫は少年達が拾ってきている。

所謂孤児というやつだ。
本来施設とかに行くべきなのだろうが、そこにすら入れず路頭に迷っていた。

別に金がなかろうと生きていく術はある
それを教えながら生活しているのが、今の現状だ。
貧乏まるだしの格好だが、人間は捨てちゃいないし
明るく元気に生きるのがモットー



「んで、このにーちゃん名前は?」


「え、知らね」


というか、聞いてない以前に会話が出来るかどうか…

言っておくがこの場所に来るまでに、多少なりとも身なりは綺麗にしてきた。
流石にいかにもヤられましたなんて状態では、子供の教育上あまり良くない事は分かっている。




「おいっまだ風邪ひいてんだから大人しくしてろって!」


「だから、風邪なんかじゃ…」


「咳までしてたんだから安静にしてろよ、悪化したらどうすんだよ」


奥から聞こえる声にジェフはただ苦笑するしかない。
それは他の子供も同じようで、半分呆れながらも笑っている。
声の主はロイスで、また彼の思い込みで誰かが振り回されているようだ。
別に悪意もなければ嫌なことでもないが、もう少し考え直すという事を覚えて欲しいというのが本音だ。

ロイスに絡まれている少年は、確かに身体的には恵まれておらず痩せているものの至って健康だ。
たまたま咽た所をロイスが見て、風邪と勘違いして現状に至るといったところだろう。




「うう、大人しくしてるから大丈夫だって」


「よし!」



結局ロイスに勝てもせず、大人しく言う事を聞くようだ。
そこで漸くジェフが帰ってる事に気づき、ロイスが駆け寄ってくる。



「おかえりジェフ!」


「ただいま」


「何、新入り?」


ジェフに抱えられている人物に早速興味を持ったらしい
残念ながら身長的に差がありすぎる為、抱えられている人物の顔までは見えなかった。
その事に不機嫌になったのか、眉間に皺を寄せながらも見上げてくる。

思い込み激しくて、でも優しくて、チビで馬鹿だけど―…



「いって!!」


「ジェフ何か変な事考えたろ!」



「な、なんで分っ…あ、いやいやとりあえず蹴るのなし!」



落としちまうだろ!
その言葉にロイスはぴたりと動きを止め、フンと鼻をならしそっぽを向いた。
とりあえず何を言っても無駄な状態なので放っておく
一応清潔ではあるが着れない服やらがまとめて置いてある所に、抱えていた男をそっと下ろす。



見た目はあれだが大きなふっかりとした枕に身を預ける状態になった、枕ではなく衣類の固まりだが。




「ロイス?」


下ろされた男を覗き込んでいるが、いつもと様子が違う。
それもそうだ、今までの奴等は怯えるか騒ぐか何なり反応があったのに男は反応すらないのだから。



「ロイ―…」


顔を覗きこんで言葉を呑み込んだ。
思わず片手で頭を抱える




「あー…参ったな」



じっと見つめるロイスの目は、どうみてもアレ

どうやら一目惚れ、らしい…自分も人の事は言えないが…



「名前、は?」


「…さあな」


「じゃあ、さ…」




俺がつけていい?







名前を付けて自分のものにしたかったのか
純粋からか

判断なんてつきもしないし、どうでもいい
ただ今がこうだという現実を受け入れるだけ




「クロ、アンタの名前!クロな」



「犬猫じゃねぇんだぞ…はあ」



「俺はロイスだからなーよろしくな!」



明るい声とは裏腹に、頬に触れる手はとても優しいものだった。
微かにピクリと反応したのに、固まったロイスは次の瞬間抱きついていた。



後で聞いた話
ロイスにとってクロは美人というよりは、可愛いという印象だったらしい。


因みに俺は美人だって思ったけど…あ、どうでもいい?あっそ





END
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