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□白き薔薇は枯れ果てようと
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こうやって息抜きでもしないとやっていられない。
別に仕事が嫌という訳ではない
セバスチャンには言っていないが、記憶が全て一つになるのは相当負荷が掛かっている。
今はそうでもないが、たまに記憶が混ざり合い混乱する。

ただ当初セバスチャンと契約をした自分と、今の自分が根強い事からか…


我慢が出来ず気を付けなければ暴走し兼ねない。
何をと問われれば勿論、あの愛しい悪魔に対しての感情だ。
セバスチャンは今こうしている事で幸せだと、今までの事は今の時間に比べれば大した事はないと言っているが
ずっと自分を想ってくれていたというのに、今まで気付かず共にいた過去の自分が殺したい程憎い。



「はあ…」



それを思うと、抱き締めたくて仕方がなくなるのだ。
苦しいと言われるほどキツく抱き締めたい。
もう無理だと言うほど、ベッドの上で愛してやりたい
言えばセバスチャンは素直に受け入れるのだろう…

だがそれは出来ない
これは自己満足でしかない押し付けの感情

アイツが気にしていない事に対し、負い目を感じればアイツは嫌な思いをするだろうし
罪悪感など持って、アイツに触れたくはない。

つまり言えばまだ感情が定まらず、整理できていない状態だ。


「……」


屋敷に入れば、何かが焦げた匂い…。
誰が原因かなど分りきった事で、思わず片手で額を抑える。
いつもならばセバスチャンに任せ部屋に戻る所だが、ふと気になり厨房へと足を向ける。












「何をやっているんだアイツ等は」



厨房から言い争う声に、首を傾げる。
いつもの事ながら言い訳を並べるバルドの言葉を、片っ端から一刀両断しているのだろうが…



「―ひぁっ!!」


物音がしたと同時に上がる声に、思わず厨房の入り口で固まってしまった。

調理台の上に押し倒され、バルドに圧し掛かられているセバスチャンの姿。
ほんの僅かな足音に二人共気付いたのか、シエルを見て固まった。



「ぼ…シエル様っこれはあの…」


「…来い、セバスチャン」


「…え、あ…はい」


焦ったように言葉を紡ぐバルドを遮り、セバスチャンを呼ぶ。
思ったより低い声が出た事で、内心軽く驚くがそんな事はどうでもいい。
圧し掛かったまま固まるバルドを押し退け、早足に近づいてくる。
自室に戻る為に歩き出した後ろを、どこか不安気な視線を送りながらも着いてくる。




厨房では一人になったバルドは漸く力を抜くが、床にしゃがみ込む。



「…ありゃあ絶対やべえ」


勘違いされている
いつものように仕込みをしようとしていたのだが、ついウズウズして火炎放射器を使ったのだが…
悲惨な状態の厨房に、久しぶりにセバスチャンの説教。
何を言おうとも返される言葉は正論で、それには何も言い返せない。
僅かに動かした足は、床に転がっていた炭と化した元食材を踏み―…

セバスチャンを押し倒す形になっただけだ
その際丁度いい具合に両手首を掴んで、膝を割って身体が密着し…
丁度感じる部位に触れてしまったようで、セバスチャンが声を上げた所に我が主は来てしまったという所




「…俺は死刑か?」


だとしたらあの場で問答無用に、護身用の銃で脳天を打ち抜かれても仕方ないと思う。
何を言おう、使え始めた頃もセバスチャンに対し独占欲というものはあったのだが
所謂お付き合いを始めた頃からは、物凄かった
何がと聞かれれば素直に答えよう

セバスチャンに手を多少なりとも出した相手が、社会的に抹消されている。

言っておくが
本人も警告し、それを無視した輩にだけだ。
何より凄いのはセバスチャンがそれに気付かないという事
アレだけ普段鋭いというのに、自分の事は鈍いというよくあるあれらしい。



セバスチャンは抹消している事は知っているが、その理由までは知らない。
シエルが一言『邪魔だったから』と言えば、『そうですか』で終わってしまうからだ。




「あ゛ー!んな事より、どうすりゃいいんだ」



ガシガシと頭を掻くが、何も思いつかない。
とりあえず主人がそこまで子供ではない事を願うばかりだ






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