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□我侭聞いてください!
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抱きつかれたまま動けないでいるセバスチャンの傍に行くと、バルドはそっとフィニの頭を多少乱暴に撫でる。


「言わねーと分からねぇだろ?どうしたよ」


「うぅーバルドさぁあん」


顔を上げたフィニに、思わずギョッとする
ボロボロと涙を零して、泣いていたのだから。
これには二人共困惑する
今まで一度たりとも、フィニがこの様に泣いた事などないのだから。



「我侭だっていうのは分かってるんですけど」


グズグズと鼻を啜りながら、そっとセバスチャンから離れる。
漸く動けるようになったセバスチャンは、フィニの隣に腰掛ける。
あまりにも自然な動きだったのだが、バルドからしてみれば意外だった。

いつも仕事に煩い以外知らない、こんな風に優しく接している姿など想像すら出来なかったというのに…



「こうしてると親子みてぇだな」


ポツリと呟いた言葉に、涙をピタっと止めフィニが顔を上げる。
何だとは思いつつ、泣き止んだのならそれでいい。


「僕が子供で、セバスチャンさんがお母さん・・・バルドさんがお父さんって事ですか?」


「へ?あー…ポジション的にそう見えそうだなって話でだな」


瞬間ぶわっと止まっていた涙が、ダムが決壊したかのように流れ出した。
思わず一歩後ろに下がるバルドを、セバスチャンが冷めた目で見つめていた。



「フィニ、泣いていては分かりません」


「うっ…僕、嫌です」


「何がですか?」


「セバスチャンさ、ん゛…ど親子に見えるのど、バルドさんとセバスチャンさんが夫婦なんていやです」


何とか堪えながら話す内容に、バルドは唖然、セバスチャンはきょとんとしていた。



「だって、だってセバスチャンさんは僕の奥さんなのにぃいい!!」


「フィニ…」


いやいや結婚してないから妻って訳でもないし、そもそも男だろう。
セバスチャンも何でそこにツッこまないんだ!?
頭の中で騒ぎながらも、少しずつ状況が理解出来てきた。




「悪かったな、お前とセバスチャンがそういう仲って知らなかったからよ」



要はそういう風に見られたいという事だったのだろうが、それを知らずトドメをさしてしまったらしい。
バルドとフィニのやり取りに、漸くセバスチャンも理解した。



「私も気付かずすみません」


「セバスチャンさんは悪くないです、それに忙しいのに我侭言ったらいやじゃないですか」


ぎゅっと抱きついてきたフィニを撫でてやる。


「僕もっとセバスチャンさんと一緒にいたいです、恋人っぽい事もしたいんです」


なるほど。
普段から忙しい身であるセバスチャンを気遣い、我侭を言えなかった。
その我侭はとても可愛らしいもので、思わず笑みがこぼれる。



「それくらいの我侭なら言ってくださって構いませんよ」


「いいんですか…?」


「はい、その方が私も嬉しいですし」


好きな相手には貪欲になってしまっても、仕方のない事だろう。
目を輝かせるフィニに、バルドもホッとする。
いつも元気な存在が、落ち込んでいると調子も出ない。



「あ、じゃあ…僕セバスチャンさんとエッチな事したいです」



その言葉に二人は…固まった。
何の裏もなく、まるでそこまで散歩に行きましょう!的なノリで言ってくるものだから…。
固まったままの二人に気づかず、何か思うところがあるのかフィニはバルドを見遣る。

嫌な予感がする…



「バルドさん」


「…なんだ」


「エッチの仕方教えてくれませんか?」



やっぱり!!っていうか何で俺に聞くんだよ!?
そう至極冷静(自分を褒めてやりたい)に聞けば、相手に聞くのも失礼かと思った…だそうだ。
本人が目の前にいるのに俺に聞くのかお前は!!

いつも冷静に判断を下し、的確な指示をくれる筈のセバスチャンは顔を赤くしたまままだ固まっていた。




「バルドさん!お願いしますよー」



…起きなきゃよかったぜ








END
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