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□無題
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一瞬固まってしまった
既にもうこの会話は終わったとばかり思っていたのに、どうやら彼の中では違ったようだ。
それも問い…というよりは確認


「あ…その、ええと」


歩く事は止めないまま、言葉を濁す
なんと答えるべきだろうか…
そもそも一緒にいると嬉しいと言っただけで、好きかどうかとは言っていない。
ならば別に言い悩む必要はないではないか


「そ、うですね」


そう答えれば、少し後ろを歩いていたアグニに振り向いて笑う。

ああああ、反則です!その笑顔は駄目ですセバスチャン殿ぉおお!!
緩みそうになる表情を必死で耐えながら、内心は暴れ狂っていた。


「正直、そういった感情はよく分かりません」


嘘を彼は絶対吐かない
その言葉に軽く目を見開いて凝視してしまったのは、許して欲しい。


「よければアグニさんが教えていただけませんか?」


「私、ですか?」


「はい、他でもない貴方が」


自惚れてもいいですか?深読みしちゃってもいいですよね?
まかせてください!!!
今荷物を持っていなければ抱きしめていたかもしれない…。
そんないきなりは失礼ですよね、良かった…って違う。

セバスチャン殿とゆっくり話しをしたいです…


「仕事が終わってからでしたら大丈夫ですが」


「え」


「普通に声に出していましたよ…全て」


どこからどこまででしょうか!!!
熱くもないのにダラダラと汗が流れ出ている…気がする。



「夜遅くてもよろしければ、私の部屋に来ますか?」


「いいいい、いいんですか!?」


きっと普通に話しをするといった意味だろが、どうして違う意味にとってしまう自分をどうにかしてほしい。



「私もアグニさんとはゆっくり話しをしてみたかったんです」


…抱きしめてもいいですか?
あ、いや…そんな事をしたらソーマ様に頼まれた品が落ちる
悶々としていれば、立ち止まってひらいた距離は縮まっていた。
すぐ傍まで来て、セバスチャンはアグニを見上げ…



「よければベッドの中で、話しませんか?」


妖艶な笑みで、そう言った






















固まったアグニはそのまま放置された。



「流石にこれ以上時間を掛けていると坊ちゃんに何をされるか…」


チラリと遠くに見えるアグニを見、ふっ笑う。
そういった意味での感情を向けられていたのは気付いていた。
あそこまで素直に出しているのだから、普通分からないほうがどうかしている。
いつまで経っても何も言ってこないアグニに、痺れを切らしたのはセバスチャンのほうだった。



「これでいい加減気付く…といいんですが」



私も貴方が好きです、と言葉にはしていませんが
流石にそれが人間と同じ感情か、と問われると困る…だからこそ「よく分からない」と言った。
それより今夜彼はどう行動するのかどうか
あまりにもヘタレっぷりを発揮するのであれば、理性を剥ぎ取って差し上げましょうか…












あのまま固まって突っ立っていたアグニは風邪をひいた
その晩、そんなアグニを呆れながら看病するセバスチャンの姿があったとかなかったとか






END
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