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□すきすき、だいすき
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「「……」」


「あら二人ともどうしたの?」


夕食の時間までの間、手が空いてしまい暇を持て余していた。
レイチェルは今まで自室でゆっくりと過ごしていて、この状況に首を傾げる。
机を挟んでシエルとヴィンセントは、テーブルの上のチェスボードを見つめているだけ…
それだけならまだ遊んでいるのだと解かるが、その表情が問題だ。

ヴィンセントはそうでもないが、シエルはどこか落ち込んだような…



「あ…お母様、体調はよろしいのですか?」


「ん?ええ、大分良くなったもの」


「レイチェル、あまり無理をしてはいけないよ?」



分かってるわ、で…?

話を逸らそうとしても無駄だとばかりに、笑顔で二人にニッコリ笑う。
シエルは観念したように力なく一点を指差す

その先は夕食の準備に忙しく働くセバスチャン…




「セバスチャンがどうかしたの?」


「昼時の、あの後から…」


「ちょっと怒らせてしまってね、相手をしてもらえないから拗ねてるんだよ」


それはお父様もでしょう…と、目で言うだけにした。
頬に手を当て、レイチェルは呆れ顔
自業自得だと思う

今朝起こしたら面白い程慌てふためいて、二人を起こしながらも身なりを整え
狂ってしまった予定を調整しているのにからかうから…


「ちゃんと謝ったの?」


二人は沈黙を返す
それにはただ溜息を吐くしかできない。
ただの主従関係ならばこんな事もないかもしれないが、それはそれこれはこれ
仲も良ければ喧嘩もする、主従というよりは家族のようなものだとレイチェルは思っている。
それは二人だって同じ筈


「夕食の前までにはちゃんと仲直りする事、いいわね」


「…分かりました」


「アナタは?」


「分かってるよ、君には敵わないな」


















「…このくらいでいいでしょう」


一通りの準備を終え、ホッと息を吐く。
今日は本当疲れたと感じる
朝に入っていた予定を全て謝罪もしなければならないし、それを後日の予定に入れなければならなかった。
自分も寝てしまったのは悪いが、元はと言えば二人が…ごにょごにょ

とにかく昼時にレイチェルに起こされた時は、悪魔だからなりはしないが心臓が止まるかと思った。


『もうお昼よ?セバスチャン』


『はうッ……え!?』


何故起こすのにその…ち…乳首を抓まれたのかは知らないが、とりあえず起こされた。
執事たるもの主人の仕事を滞りなくサポートするべきなのにこの失態
かなり焦ってバタバタと騒がしくも二人を起こしたのだが…
らしくないとは思いつつ、そもそも人間らしくしろと言われていたのだし…焦るくらいいと思う。

そんな中に二人は笑って「だらしがない」だの「執事失格」だとか…
からかっているのは分かっているのだが、どうもカチンときた。

…で

『…私は仕事に戻ります、それ以外の事は何も言いませんし聞きませんので』


つまり少しでも遊ぶ…なんてもってのほか、仕事以外の発言も聞く耳すらもたないと言い切った。
『命令』されれば仕方ないが、二人がそこまでするとも思わなかった。
予想通りこの夕食の時間まで、仕事のみに集中できた。

受け答えも仕事の一環として、会話をしたのはティータイムくらいだろう…



ふとあまり静かなのも気味が悪いと思わず震える。
夕食の準備が整った事を伝えるついでに様子でも見ようと厨房を後にした。






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