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□これだから無自覚は
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「いって!」


いつもならさっさと準備をしてしまう執事は、今日は主人の命令でいない
その為邪魔をされず調理を出来ると内心喜んでいたのだが…


「あー、チクショー」


指を切るなんて情けない…仮にもシェフだというのに、こんな初歩的な…
このままでは血も止まりそうにないと、手当てしようと振り返る


「って、うお!いつの間に帰ってたんだ?!」


「たった今ですが…、今日は破壊しないで調理されていたようで何よりです」


ニッコリ笑って遠まわしに嫌味を言っているが、自分にとっては大したダメージにもなりはしない。
ふとセバスチャンの視線が自分の右手に落ちた


「…切ったんですか?」


「わ、悪いかよ…誰だってこーゆー時はあんだよ…って、おっおい!」


手を取られたと思ったら、そのまま切った指を咥えられた。
口を開けたまま固まる自分には気づかず、そのまま傷口を舐められた
段々と顔が熱くなってきているのに、恐らく色も赤くなり始めているのだろうと他人事のように思った。


「血は止まりましたね、早く手当てを…バルド?」


「…あー、ありがとよ…ってかお前さん誰でもこんな事してんのか?」


「いえ?貴方にだけですが、それが何か?」



首を傾げ見つめてくるセバスチャンに、ガシガシと頭を掻いて何でもないと言うしか出来ない。
少し身長差はあるが、ぽんぽんと頭を軽く叩いて厨房を後にした。
厨房に残されたセバスチャンが僅かに頬を染めていたのをバルドは知らない。


「…なんで私はあんな事をしたのでしょうか」


ただ自然に身体が動いて、気づいたら…
とりあえず夕食の時間も近づいている為、それは頭の隅に追いやる事にした。






「…あれはどういう意味だ?深読みしろってことか?それともただの無自覚か?!」


普段こういった事とは無縁で、考えるが全く分からない。
というか可愛いとかエロいとか思った自分は終わっているのか…


「はっ!これが恋ってやつか?!…って、ねえよな…多分・・・」


舐められた指に残る感触が忘れられない…
特に何もしていないがドッと疲れた気がする…。







END
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