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□Once Again
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どうやってバレたかなんて、いくらでも原因は探れば出てくる。
住処へと戻れば、荒らされ所々に赤い染みが出来ていた。
量からして致命傷ではない事は確かだが、怪我をしているのは間違いない。

自分の拾った子供達は何らかの心の傷を負っている、それなのに…



「チッ…」


「ジェフ…」


この場所に誰もいないという事は、ただ自分達のような者を排除したいだけの輩とは違うだろう。
だからといって良くない事には変わりない。



「とりあえず、行くぞ」



いつまでも此処にいても意味がない。
相手が戻ってくる可能性も、目的がハッキリしてない今はゼロとは言えない
追ってきていた輩は撒いた為、その点だけはマシな状況だ。

ジェフは菓子の入った箱の底から、何かを取り出すとそのまま腰に差した。
それを見たロイスが一瞬身を強張らせるが、気にしている暇はない。




さて、どうするか…
バレた原因の可能性の中に、誰かが教えたというのもあるが



「流石にねぇだろ」


ファントムハイブにとって、自分達などどうでもいい所だろうし
現当主はくえない男ではあるが、嫌いではない。
だがもし『彼女』の命令の一部にあったとしたら、間違いなく実行する。
何にしろそれが原因なのだとしても、全ての責任は己自身だ。

早足に歩き、何本もある迷路のような地下水路を進む…。

ピタリと足を止めたジェフに、後ろについていたロイスも止まり不安気に見上げる。



「ジェフ…?どうし」


「クロと隠れててくれ」


その場にクロを下ろすと、ロイスの頭に軽く手を乗せ走り出した。
何が何だか分からない状況で、それでも言われたとおり隠れようとクロの手を引く。
心臓が煩いくらいに跳ねて苦しい、息が不自然に上がる。

銃声が響き思わず繋いでいた手に力が篭る。
慌てて力を抜き、伺う

痛い筈なのにそれに一切顔を顰める様子もなく、ただロイスを見つめる赤い瞳に少しずつ落ち着きを取り戻す。



「俺が、守るからな」


そう呟いて早足にジェフとは逆の方向に歩き出す。

守るのは自分、守られる事はない
それはそう自分が決めた事。
大切なものはもう二度と失いたくはない
居場所だって皆が無事ならばいくらでも作り直せる。
そう、命さえあれば。














小さい身体のくせに、大人ぶってる

でもどう足掻いても子供には変わりないのに…

その細い身体で、守ると告げる
守られるほど弱い生き物ではないのに

それでも何も言わず傍にいるのは…何故だろうか


もういないあの子供と似ているから?

その影をこの子供に押し付けて、満足していると?


なんということだ…

こんなにも弱い


よわいいきものになりさがったか


うまくはたらかない思考に、多少苛ついてきた
滅多に考える事の出来る状態になれないというのに…




「クロ!」


ハッと意識が引き戻される。
軽い衝撃を身に受け、そのまま倒れてきたものと一緒にその場に倒れこんだ。
倒れてきたのは一緒にいた子供…ロイス
自分の白いシャツが赤く染まっているのに、ゆるゆると視線をロイスに向ける。

顔半分が赤く染まり、血が流れ落ちる。
痛みに顔を歪ませ、ぎゅっと押さえているのは右の目

ドクンと心臓が跳ねる


そこまで、似ていて欲しくない
本当に依存してしまう…



「ごめんなぁ僕、俺等の言う事聞かないからそうなるんだぜ?」


「う…ぐ、だれが…聞くかよ!」


「チッ生意気なガキは嫌いなんだよ」


いつの間にかいた二人の男が、血に濡れたナイフを持って近づいてくる。
思わずぎゅっとロイスを抱きしめる。
その様子に男二人はニヤリと品のない笑みを浮かべ、笑う…ああ…気持ち悪い

思考だけはハッキリするものの、これがいつまでもつかは分からない。
それに身体は思うように動かず、この子供を連れて逃げれそうにない。

たかが人間風情に―…




「なあ、兄ちゃんよ」


声までもが嫌悪を感じる
怠慢な動きで顔をあげ、声を発した男を見上げた。



「俺等の目的は、アンタなんだよ」


不愉快さに眉を顰めたつもりだが、どうやら表情は変わっていないようだ。
反応の薄さに男達も舌打ちをし、笑みを消した。
腕の中で痛みに苦しむ声が聞こえるが、今の自分ではどうしてやる事も出来ない。



本当に…弱い生き物になったものだ







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