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□Once Again
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「あーもーやってられるか!」


手に持っていたものを、ロイスは不機嫌に力いっぱい投げる。
それは壁を背に座っていたクロの横に落ち、視線が静かにそれを追う。


「あ、悪い!」


特に投げられたものを見ているだけで、それ以外の反応は返ってこないのだが
だからと言って、もしかしたら当たっていたかもしれないと思うと謝るしかない。

ジェフに勝手に連れ出した罰として、皆が拾ってきた物の分別を任された。
ハッキリ言ってゴミだろう…というものが多い為、殆ど捨てるようなものばかりだ。
一人で行こうとしたが、珍しくロイスを視線で追うクロに気付き連れて来た。


『…仕方ねぇけど、あまり奥には行くんじゃねーぞ』


渋っていたジェフだが、今の所クロが一番反応を返すのはロイスというのは間違いない…
仕方なさ気に一緒に行く事を許可してもらった。



「それ、来た時から持ってるよな…大事なもん?」


「…」


ポケットから取り出した銀色の懐中時計を、片手でそっと握っていた。
返事はないのだろうけれど、と思いながらも、つい問い掛けてしまうのは仕方のないことだと思う。



「…たいせつ」


「え」


幻聴かと疑いながら、思わず凝視してしまう


「い…今喋った、よな?もっかい!何か喋ってくれないか!?」



目の前にしゃがみ込んでじっと見つめる。
ゆっくりとした動作で顔を上げて、ロイスと視線を合わせた。
初めての行動に、思わず息を呑む。


「たいせつ、なんです」


初めて聞いた声は、掠れて小さかったけれどしっかりと耳に届いた。
ふわっと笑ったと思うと、すぐ手の中の懐中時計に視線を戻してしまった。










「ロイスー、クローいい加減帰って来い…って何やってんだ?」


「うあージェフ、クロが…クロがさぁー」


座り込んでいるクロの腰に抱きついて、ぐりぐりと顔を押し付けているロイス。
ほんの少し困ったような表情で、ジェフを見つめるクロに驚くがとりあえずロイスを引き剥がす。


「何やってんだって…」


「クロがさ、喋ったんだよ!それだけじゃねーよ!わっ笑ったんだぞ!?」



これがジッとしていられるかって!
顔を真っ赤にしたまま、ジェフに語り掛ける。
何を言っているんだとは思うが、嘘ではなさそうだ…
場所こそなんとも言えないが、和やかな雰囲気に苦笑する。



「っ!」


一瞬でピリっとした空気が流れる。
ジェフは勿論の事、ロイスも身を強張らせた。
ロイスに至ってはジェフ程経験はないものの、全く無経験という訳でもない。
素早くジェフはクロを抱き抱えると、落ちていたガラクタを暗闇に向け投げる。
瞬間ロイスとジェフは逆方向へ走り出した



背後で怒声が響いているが、振り向く余裕はない。




「チッ!此処もバレたんなら移動しねーとなっ」


「アイツ等の目的は!?」


「知るかよ!とりあえず俺達にマイナスって事だけは確かだ…転ぶなよロイス」




嫌な予感がする
昔からそうだ、こういった時に限って予感は的中する。
親が殺されたあの日も、ロイスは胸騒ぎがしていた…

地下水路に銃声が響き、思わず肩が跳ねるが走る事を止めない。
止まる事は死を意味する














「ちの、におい」



ポツリと呟いた言葉は、足音に掻き消された―…











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