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□Once Again
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小さく幼いと言ってもいい少年と契約を交わした

魂を貰う条件で力を貸した

全ては己の美学の為、忠誠などではなかった。


確かに忠誠ではなかった


そう、もっと深く違う


重く苦しく…捕らわれた


愚かなのは自分










『愛』などと、知らなければよかった

気づかなければよかった

理解しかねる、必要のない感情

芽生えさせたのはただの子供

なんと惨めで愚かだろうか





「…」


必ずあの子供の生まれた日に、作ってしまうケーキを傍目に何をしているのかと自問自答した。





「久しぶりねセバスちゃん」


掛けられた声に、鈍い動作で首だけ向ける。
赤い…

ああ、赤い死神か


「やぁね、厭味くらいとんでくるのかと思ったのに…つまらないわ」


カツカツとヒールの音を響かせ、自分に近寄ってくる。
動くのも億劫で、ただ黙ってジッと見ているだけ。
その反応が余計気分を害したのか、赤い死神は眉を寄せ、顔を顰めた



「そんなにあのガキが大切だったの?セバスちゃん」


「…」


「私の愛したセバスちゃんはどこいっちゃったのかしら」


溜息を吐き、首を振る


「……人間を形どった姿のまま、惨めに晒すのね。まあその姿も綺麗だけど」


そっと手を伸ばしてきたと思ったら、首を掴む形で止まる。
勿論力は込められていない、何がしたいのか理解できずただ目の前の赤い死神を見つめていた。







「楽にしてあげましょうかセバスちゃん」


大丈夫、痛くないから―…































「グレル・サトクリフ」


「思ったより遅かったのね、ウィリアム」


「…何をしたのか理解しているのですか?重罪ですよ」


眉間に寄った皺をさらに深め、睨みつける。
反応は意外なもので、怯えるでも抵抗するでもなくただ黙って悪魔のいた場所を見つめていた。



「ねぇウィル」


「…なんですか」


「アナタもセバスちゃんの事、好きだったでしょう」


その言葉にずれてもいないメガネを直す


「勘違いも腹立たしい、誰があんな害獣…」


「だって、アタシが何をしようとしていたのか解かっていた筈よ?なのに止めなかった」



それは何故?
いつもならば言葉で黙らせるのは自分のほうだというのに、今は全く逆になっている事に機嫌が下がる。



「…とにかく、ソレは持ち出し禁止。過去へ他人を送ったのは重罪…全く貴方のせいで私まで連帯責任です」


どうしてくれるんだこのカマ野郎…。



「だってぇ見てられなかっただもの」



慣れない事をすると疲れるでしょう?
それと同じ、全く知らなかった感情を持ったらどうなるのかしら?
それが『愛』で、本来育むべき相手がもういないのだとしたらとても脆い
少しずつ、少しずつ壊れていくのよ―…


壊れていくセバスちゃんは素敵よ?
でも私が壊さなきゃ意味がないじゃない

他人の、それも気に食わないガキなんて
冗談じゃないわ




「さっさと行きますよ」


「ぎゃ!イタイイタイハゲる!髪引っ張らないでよっもぉ」








過去なんていってもどれくらい遡るかなんて知らない

けれど彼は悪魔だから

いつかは会えるんじゃない?











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