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□Once Again
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何故こうも以前と違うかまでは聞こうとは思わない、そこまで深く関わってどうする…という思いからだが


今の言動を見る限り、自分で状況を理解出来そうにないことから
ここはヴィンセントが管理しなければならない所だろう。
それより相変わらずデカい屋敷にも関わらず、使用人の数が少なすぎる。

ファントムハイヴという名がある限り、その辺にいる一般人を使用人にするのは難しいだろう
だがそれにしても少なすぎる、現にこんな状態で出歩いても気づく者がいないのだ。



「・・・それはワザとか?」


「私のだからね」


「知っている!」


シーツだけではと、とりあえずヴィンセントのコートを羽織っているが・・・。

余計イヤらしく見えるのは何故だ

それより改めて見る
日に焼ける事がないのか白いが、スラリとした手足で長身
どこからどう見ても男だというのに・・・
だがそれを不快に感じる事がなく、普通に受け止めている自分がいる事に驚く。

どうやら部屋に戻る気がないらしく、ヴィンセントも強要せず(寧ろ喜んで)此処におくらしい。
ソファに腰掛けたヴィンセントの膝に頭を乗せ、寝転がる
シーツと服で殆ど肌は隠れたものの、度々白い艶かしい足が覗くのが辛い・・・。
しかも何故か寝る様子はなく、ジッとディーデリヒを見つめているものだから居心地が悪い。
あの時サンドイッチを食べている時は、こんな事はなかったというのに。


・・・何故だ、何故鼓動が早まるんだ


「・・・ディーデリヒ?」


「っ、は、あ・・・な、んだ」


「私のだからね」


ワントーン低くなった言葉に、現実に戻ったとばかりにハッとする。
死線をくぐり抜けてきた事は多いのに、何故か冷汗が伝った
どうやら結果的に見つめ合う形になっていたらしく、それが不愉快だったようだ。
あの読めない男がなんと分かり易い事か・・・



「いつもと違うお前が見れて傑作だな」


「そうかい、私も真っ赤になって焦る少年のような君をみてれて楽しかったよ」


「・・・・・・俺はそろそろ行くからな、ソイツに服を着る習慣をつけておけ」


さっと立ち上がると、ヴィンセントの返事も待たず部屋を出て行く。
だがそこは流石ファントムハイヴ、部屋の外でタナカが既に控えており
ディーデリヒの見送りへと歩みを進める。




ドアの閉まる音と共に、静かな部屋に苦笑が漏れる。
ヴィンセントはセバスチャンの髪を梳き、少し身をかがめる。
目だけ動かし、セバスチャンはきょとんと見上げてくる。


「全く・・・よりにもよって、次はディーデリヒか。予想していなかった訳じゃないけど」


まさかあのお堅いディーデリヒが、一瞬でオちるとは思わなかった。
きっと来る度にセバスチャンを気にするようになって、そのうち手土産でも持ってきそうな予感がする。
本人は無自覚のようだが、それはそれで助かる。
自覚されると何かと面倒だから



「愛してるよ、セバスチャン」


ちゅっと鼻の頭にキスをすれば、くすぐったそうに笑う。
ぐりぐりと頭を押し付けてくる仕草は、もう可愛くて仕方がない。
きっと恋は盲目とかいうのもあるかもしれないが、誰が見てもこの行動事態は可愛い思うだろう。
例え自分より身長のある男だとしても













「・・・おい」


「いかがいたしましたかな?」


「・・・アイツは、セバスチャンはいつもああなのか?」


ああ、とは裸で出歩くという事についてだ。
タナカは特に詳しく聞くまでもなく、状況は理解出来ているようだった。
緩く首を振り、ニッコリと笑みを浮かべる。



「セバスチャンがあの格好で出歩いたのは、今日が初めてです」


「・・・そ、そうか、とりあえず気にかけてやってくれ。俺だからいいが他の奴が何と言うか分かったものじゃないからな」


「はい、ありがとうございます」



このような事がないように、気をつけます。
その言葉にディーデリヒは小さく溜息を零し、ファントムハイヴ家を後にする。
その後姿を見送り、タナカは微笑ましそうに笑う。

タナカにとってセバスチャンは、主人であるヴィンセントを癒してくれる大切な存在だ。
若いながらにファントムハイヴ家の当主となり、忙しい毎日を過ごしていた。
そこは器量のいい事に上手くこなしてはいるが、知らずに溜まる心への負担というものがあった。
いくら素晴らしいと言われる逸材であろうと、ヴィンセントはまだ若いのだ。

それがある日突然一緒に住むとまで言ったときは、驚く反面ひどく安心したのを思い出す。




恐らく客間でヴィンセントとセバスチャンは、仲睦まじくゴロゴロと過ごしている事だろう。
勿論今日するべき事は大方終わっており、だからこそヴィンセントもセバスチャンと一緒にいる。

セバスチャンは癒しだけでなく、色々と他の者まで魅了するようで
この先その関係での心配こそあるが、その点は抜かりはないだろう。
勿論自分とてヴィンセントを守る事を当たり前としているから、主人が手を下す前に片付ける事もあるだろう。





「さて、私もそろそろ夕食の準備に取り掛かりますかな」





時間を見計らって、客間には声を掛けるべきだと判断した。








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