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□Beloved faithful dog
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『待て』を命じられたセバスチャンは、大人しく絨毯の上に座っていた。
犬に服を着せるなんてナンセンスだと言う主人のために、ジャケットやスラックスは勿論、下着まで全て取り去った。
ただ銀色のチェーンだけが光り、首の後ろで縄に結ばれてまた反対の先はベッドの足に繋がれている。
今になって、嗚呼最初から主人はこうして“楽しむ”つもりだったのだと気付き、別に後悔はしないが、自分の鈍さにほとほと呆れてしまった。
「もっとはっきり言ってくだされば良いのに…」
そんな回りくどい言い方をしなくても、『今日は犬と飼い主の振りをしながらセックスをしよう』と言われたところでどうせ断りはしないのだ。
寧ろ直接“命令”された方がセバスチャンとしては気が楽だった。
まるで仲睦まじい恋人のような真似をされると、変な錯覚に陥ってしまって、職務に差し障るから困る。
「奥様に出来ないことを、私にされてるだけなんでしょうけど…」
「お待たせ、セバスチャン。」
がちゃりと扉の開く音がして、セバスチャンはどきりと心臓を跳ねさせる。
「どうしたの?」
「いえ、何も…」
自分の独り言を聞かれてしまったかと思ったが、それは要らぬ心配だったようで、セバスチャンは一人胸を撫で下ろした。
ヴィンセントはそんなセバスチャンに首をかしげたが、まぁいいや、と提げて来た紙袋の中身を取り出す。
「はい、まずこれね。」
ヴィンセントがセバスチャンの頭にぱちりと嵌めたのは、犬の耳のついたカチューシャだった。
ご丁寧にも耳の毛の色は黒。
「うん、可愛い。今年のハロウィン、セバスチャンはこの格好でパーティーに出ようか。」
「え…!?」
この格好で、と言ったら全裸だ。
一気に顔色が悪くなるセバスチャンに、ヴィンセントは冗談だよ、と笑った。
「他の誰かに見せるわけないじゃないか。この可愛い乳首も…」
「あ、ンっ!!」
胸の突起を引っ掻かれ、
「真っ白なお尻も…」
「ふ、あ…」
つるりと尻を撫でられ、
「勿論、厭らしいココもね。」
最後に中心をきゅっと掴まれて、
「ああっっ!!」
“犬”はきゃんきゃんと哭いた。
「可愛い声…」
「はっ、はっ、ひぅっ!!」
ヴィンセントはうっとりとセバスチャンの潤んだ目尻を拭う。
その下で彼の性器を弄りながら。
「たくさん哭きなさい、セバスチャン。私は『煩い』なんて叱らないからね。」
「ふぅう…っ、あ、あう…やだ…やだぁ…」
自分の下の方から、くちゃ、くちゅ、と濡れた音がするのが耐えられなくて、セバスチャンは耳を塞いだ。
頭の上の黒い獣の耳は相変わらずぴんと立っている。
本物の耳はきちんと塞いだというのに、聞こえるはずのない耳からも音が聞こえてくる気がした。
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