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□How I Love
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「おはようござます。雪がかなり積もりましたので、本日の遠出の予定は延期になりました」



カーテンを開けられ指し込む朝陽とはまた別の、明るさが部屋を満たす。
雪に反射した陽の光だと、セバスチャンの言葉で理解する。
アーリーモーニングティーの香りに身を起し、差し出されたカップを受け取る。



「昨日頼まれましたマフラーですが、既に編み終わりました。いかがいたしますか?」



「もう出来たのか。流石、仕事が早いね…朝食の前に手渡すから、ラッピングをしておいてくれるかな」


「畏まりました」



それで、と言葉を切り
自分の頼んだマフラーはどうしたのかと、目で問う。
言葉にせずとも理解し、編み上がったマフラーを取り出す。



「…濃紺色がお似合いかと思い、勝手に此方を選ばせていただいたのですが」


「深い良い色だね、とても気に入ったよ」


「光栄です。あの…作る前に仰ったこれは、どう言う意味だったのですか?」


編んでいて思ったが、やはり使う分には些か不便ではないだろうか…。
自分は言われた通り、かなり長めに編んだが…

返答を待っているセバスチャンに、もっと近寄るように手招きをする。
受け取ったマフラーを広げ、自分に巻いて…




「…え?」



「こうする為に長く編んで欲しいとお願いしたんだよ」


立ったままだったセバスチャンの腰を抱き、引き寄せれば崩れ落ちないようにベッドに両手をついた。
その彼に自分の首に巻いた方とは逆をそっと巻く
二人を繋いでいる一つのマフラーに、あまり理解が追いついていないのか黙ったままでいる。



「こうしていると近いし、温かいとは思わないかい?」


「ハッ…え、あ…はい」


「一度マフラーはこうやって利用出来そうだったから試してみたかったんだ」



他でもない君と

仕方なくベッドに申し訳なさそうに座るセバスチャンの耳元で、そう囁けばビクリと肩を揺らす。
視線が絡み合い、口元を隠しているマフラーを指で下げるとキスを送る。
真っ赤になって目を閉じる姿は、あまりにも可愛らしくて
今が朝で屋敷に妻子が留守でいなかったら、きっと押し倒しているかもしれない。



「セバスチャン」



「…はい」



「今夜、私の部屋においで」



その理由は言わずとも分るだろう?

小さく頷いた執事に、笑みが溢れる。










そうだ、二人きりの寒い日にはあのマフラーで出掛けようか
冗談混じりに言えば、それはいい考えですねと珍しく返してきた
軽く驚いていると妖艶な笑みを浮かべ、身を寄せてくる。
普段の君と、こうしている君のギャップの大きさに度々驚かされる。


濃紺色は私のイメージだと君は言った



なら今度から君への贈り物はその色があるものにしようか

いつも私を忘れないように

私の色に染まるように



君は言う

もう染まっています、と

それでも満足出来ないと言ったら強欲だと呆れるだろうか?



我侭で、欲深い…そんな人間の私に、いつまでも繋ぎとめておきたい
そんな事をいつも思っていて

時に試すように突き放し、困惑するほど抱き締め愛でる。

その繰り返し
その度君は傷付き、涙を流し…抱き締めれば安心したように笑みを溢す。


ただ一つ言える事は


それが『私流の愛し方』だという事






END
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