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□その執事、変化2
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前回の失態で性別が変わったセバスチャン
背が縮んだ。という事をなんの疑問もなしに受け入れる人間しか周りにいないので楽ではある。
いつもの様に使用人への指示を出し、朝食の準備に取り掛かる。
忙しなく動き回る度にヒラヒラと燕尾服の尾が揺れる。
ふと動きを止め、一瞬何かを思案するがまた手を動かす。
「まあ、別に困る事ではありませんしね」
「はい?」
「何度も言わせるな」
エリザベスが来る。
どうやらまたシエルに会いたいが故にこっそり飛び出したらしい。
しかし今回は引き止めるとまではいかないが、すぐに分りとりあえずこちらに連絡が来たという事らしい。
紅茶を注ぎ、そっと音もなく差し出す。
ふと外を見る…
「本日…ですか」
「ああ、今日だ」
つい先程フィニが木を倒し、それが運悪く屋敷に倒れ一部損壊していた…。
いつもと同じならば、セバスチャンが朝食の時間までに片手間で直しているところだが。
例え直したとしても、その壊れた部屋の衣類がほぼ使えない。
パーティーの好きな彼女の事だ、また小さなダンスパーティーを開きたい
もしくは社交期の近い今なら、この衣装のない状況では作ればいいと言ってくるだろう。
何か持参で衣装は持ち込むのだろうが、新作に目がないのは分っている。
「分りました。いかな状況でも応対できるよう準備に取りかかります」
「ああ」
セバスチャンが部屋から出、扉が閉まるのをただ笑みを浮かべて見ていた。
そっと隠していた一通の手紙にもう一度目を通す
まだ元に戻っていない状況の彼に、エリザベスのお遊びは少々キツイものがある
それを知っていて今回にしたのだから…
手紙には数日前に今日来る旨が書いてあった
あえて今日に木の整備をするようセバスチャンのいないうちに伝えておいた、此処まで予想通りだとある意味呆気に取られるが。
大切な屋敷ではあるが、セバスチャンがいるのだから大丈夫なのは分っているからこそ
「お前も甘いな、セバスチャン」
鋭いアイツの事だ、どうせすぐに気付くだろう
だが気付いた所で遅いのは解り切っている事で、精々そのまま現状を受ける身でしか出来ない。
今日どうなるか考えるだけでも楽しくて仕方ない。
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